2023年12月5日火曜日

HEXA 物語 その2

 バンブーロッドアクション進化への願望

 その昔バンブーロッドビルダーとしてロッドを作って行く中で、かなり早い時期から、気になっていたのがメタルフェルールのロッドアクションへの影響についてでした。
 金属パイプの2層構造、又は3層構造のフェルール数cmの部位が物理的に曲がらない、にも関わらずバンブーロッドアクションは素晴らしい物を作り出す事ができる。
 しかし更に良いバンブーロッドに、進化させたいと思うのが、バンブーロッドビルダー・アキマルの欲。
 ソリッドブランクからセミホローのブランクにアキマルバンブーロッドが変化、進化していく中で、その探究実験が繰り返されてきました。

 バンブー製オーバーフェルールとスピゴットフェルール

 大きな転機はセミホローロッドを製作し始めて、暫く後でした。
 その頃には、メタルパイプフェルールで派生する直線部位の要素を少なくしてやる事で、ロッドアクションの伝達性は高くなる=ロッドアクションが確実に良くなると分析。
 方法を探していく中で、思いついたのが、セミホロー構造で派生する六角穴をメスとして使うアイデア。
 セミホローのバンブーブランクの六角穴をジョイントのメスとして使用、プラス、メス穴と同じサイズの六角バンブーブランクをオスとするのです。
 このジョイントの答えの謎解きは、なかなかに難しいながら非常に楽しい作業でした。

最初のアイデア。左手2本、第1案 バット側オスとオーバーサイズのTipメス。その右が第2案 スピゴットのバットオスとTipメス。7'4" YAMAME のスピゴットバンブーのオスが20mの#4ラインのキャスティング負荷で折れました。

 バンブー製オーバーフェルール。このジョイントロッドはアクションは素晴らしかったです。但しジョイント部位の外見が太過ぎでした。美しいと感じられ無かったのです。

 まず試したのが上記写真の様なバンブー素材だけでジョイントさせるオーバーフェルールやバンブー素材だけのスピゴット方式でした。しかし残念ながらどのアイデアも、帯に短し、タスキに流しで、正式な製品化までには至りませんでした。

 チタン製丸棒PIN
 2011年後半、思いついたのがチタン製の丸棒でした。オスのバンブー六角棒の中に芯材としてチタン製の丸細棒PINを、挿入、接着し、必要強度を持ったオスを形成、これをスピゴットスタイルで、メスのホロー六角穴に差し込みジョイントする方法でした。
 ジョイント後もこのスピゴット方式だとバット/ティップ共にブランクのナチュラルな太さが維持でき、其の接続後のブランクの美しさは、オーバーフェルール方式の外観を大きく凌駕する筈。当然内蔵されたチタン棒PINは必要な強さと靱りを持っていなければ行けません。
 先ずはこの構想の元、ロッドの長さや太さやアクションの適正サイズに合わせ、チタンの丸棒をダイヤモンド製、ヤスリと鋸で研磨・カット。オスの中に内蔵接着。
 メスの下端(オスの挿入口)をシルクスレッドを5mm幅でダブルラッピング、その上部5cm ~7cm 程をシルク糸でシングルラッピング、そしてコーティング。
 2013年5月、完成したこのチタン製ジョイントロッド 7'9" #4  HF- SpecialをCatskill デラウエア川の20"オーバーブラウンとレインボウでフィールドテスト。このテストは私及び凄腕のアメリカ人 Fly Fisherman 三人で行い、10数匹の20" オーバートラウトをランディングして、全員OKの完璧なテストが終了。

   Catskillの名手、Mike Danko が最初のチタン製 7'9" #4 2pc HEXA HF-Specialで 20"ブラウンをとった。
 
 更に其の1年後、2014年夏、今度は Henry's Forkで、7'4" #4  の大型YAMAME用ロッドで実験。
 先記7'9"#4ロッドよりもオスに内蔵されたチタンPINの直径は細いのですが、サイズの小さな山女魚、イワナでの日本国内テストは全く問題なし。其の上で敢えて20"オーバー鱒が掛かった時に直径の細いチタンPINがどう反応をするのか実験したのです。この実験は劇的でした。
 この山女魚用ロッドで20"オーバーの野生の大鱒を掛けた後、大鱒が強い流れに乗って暴れ、それを止めようとロッドを絞った時に、オスのチタンPINが曲がり、尚且つメス穴の根元の部位=ティップの下端が折れたのです。(この最初の実験スピゴットジョイントはバット側上端にオス、ティップ側下端にメスの構造でした)

 HEXA 誕生
 結果このチタンPINのスピゴット方式のロッドは、PINサイズの妥当なロッド数本のみ製品として製作。但し超硬度チタン棒の加工は私の様な機械音痴には、作業が手強すぎました。
 そこで、チタン棒に変わる、もっと工作のしやすい、細く、強く、尚且つ靱る、芯棒PIN素材探しを急ぎました。
 この実験の頃には、当初から頭の中でチラチラとしていたロッドブランド名のアイデア、六角形:Hexagonal から思いついた名前が自然の流れの様に決まっていました。
 正式ブランド名 : HEXA バンブーロッド、略して『 HEXA 』 

 HEXA カーボンPIN
 HEXAのオスの芯材チタン丸棒は不確実だった事から、芯材変更を決意。
 色んな素材を探す中でたどり着いたのがカーボン素材でした。
  7'6" #4 Aki & Tom HEXAを基準に、カーボン製丸棒をロッドのアクションに合わせ、オスの芯材として、研磨して適切なサイズでカット、自分の指で曲げてみる事から実験が始まりました。
 この実験が大いなる効果を予想させてくれました。指で力を加えるとカーボン棒が確かに靱るのです。靱り、力を緩めると元の直線に戻るのです。これを見つけた時は狂喜しました。
 まずカーボン丸棒でPINでオスを製作。
 同時平行作業としてメスの端口の割れを防ぐ為の作業も進化していきました。
 メスの端口をシルクのWラップやケブラーの糸でのラップなど等、幾つかの失敗を繰り返していく中で、辿り着いたのが六角メタルチェック。
 ブラスの丸パイプを叩き出し、ブランクのサイズに合わせた正六角形のチェックをメスの端口に接着するのです。メタルだと寄糸の絹糸やケブラーの様に伸びる事がないからです。


 2014年後半、辿り着いたデザインが、丸棒PINから進化した、正六角カーボンPIN。
 カーボン丸棒を自身の手でサンディング、必要なサイズの正六角形PINを削り出すのです。
 正六角形のカーボンPINを内蔵したオスと、端口に正六角のメタルチェックを装着したメス。現行のHEXAバンブーロッドの基本形が出来上がりました。
 その後オスの根本にコルクのクッションディスクを付けましたが、オスの仕様は殆ど同じです。更にメスの端口のチェックの個数が2個の世代、3個の世代へと進化。

 最新型が正六角カーボンPIN内蔵のオスと、メタルチェック1個でそのメスのブランクを伸び縮みのないメタルラインでクロス巻き、更にシルク糸でメス全体をラッピング、コーティングした第9世代HEXAに辿り着いてます。

 今年9月のレジェンド Hoagy B.Carmichael の HEXA 批評のように、現代のバンブーロッドはMr.Garrison の時代からずっと進化しています。その一つがHEXAバンブーロッドである事を彼が指摘してくれました。又、Mr.Garrison がHEXAを見たら、大いに感動していただろうと言うHoagyの言葉で、アキマルのバンブーロッド人生に、一息の安堵感。
 37年前目標として掲げた Garrison ロッド、Hoagy のこの言葉で、本の少しだけ、 Mr.Garrison に近づけた手応えを感じる事が出来たのです。

 次は?・・・・?! 

 通常の釣りオフはひたすらストレスの季節。何十年繰り返しても、ストレスしか感じないオフシーズン。しかし、時には自分を見つめ直し、次の目標を探す良い時期でもあるようです。


AKIMARU BAMBOO RODS
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