2011年9月10日土曜日

no.14 一品、逸品又は絶品

 一品、最高の一品とか天下一品等の言い方をする。
 逸品、絶品の事。
 

 竹竿作りをやっていると世間から逸品と呼ばれる、憧れのロッド、欲しがられるロッドを作りたいと常に意識する。が時として遊びで作ったロッドが認められたりする事が有る。
 

 今年初めから自分個人用の遊びの竿を考えていた。
大前提は今までのアキマルのメニューには無い新しいデザインのロッド。
かと言って、悲しいかな竹竿屋という職業柄、下手なデザインは自分で許せない。
只このロッドを売る事を意識しない分自由に楽しめる、そこで自分の感性を信じ、思い切り遊ぶ積りでアイデアを練った。有る瞬間イメージが湧いた。即図面に起してみたら想像以上に良かった。
 グリップトップをマッシュルーム型にするのだ。その下にフルウェルズのシェイプを繋げる。
これは絶対にいける。
実物グリップを削り出してみた。
コルク11個、マッシュルームの笠の部分が最大径22mm、親指の収まりが良い、其の部分が径19,5mm、グリップ部位中央が径20,5mm、最下部スペーサーに繫がる部位が径19mm。
このシルエットがドンピシャ。
7’#3の山女魚竿 セミパラボリックアクションにジャストのグリップだった。
 

 コスメティックは遊び心を更に楽しんだ。

ブランク素材は超美の日本竹WATAKE
明るいブランクに日の丸を意識した朱のトリミング・ラップ。
更にネームは墨の毛筆書き、ひらがな縦書きで“あきまる”と入れた。この名書きでロッドが凛と引き締まった。
 

 アキマルホームページのイメージ写真はプライベートの釣風景。このロッドと食べ終えた漆の弁当箱が、狙いのリラックスした風景の中に溶け込み、良い絵が出来た。
 

 10日ほど経った日、ある料理家から連絡が入った。
「あの写真に写っているトップがマッシュルーム型のロッドと同じものを作って欲しい、
駄目ならば使っている現物の中古ロッドでも良いから譲って欲しい」と・・・。
 やっぱり来たか。困った・・けどうれしい。
 その気に入ってくれ様がうれしくて、使っている現物を譲り渡す事にした。条件付で。
其の料理人が私の為に作った最高の一品をご馳走してくれる事を前提にしてロッドを送った。一生の宝物にすると大喜びのメールが届いた。竿屋としての最高の喜びだった。
 更にその後同じようなリクエストがお得意さまから数件届いたが・・・。
 
 6月のアメリカBamboo Rod Days での好評から製作意欲が湧きあがった。
 7’8”#3の鱒竿、ヘンリーズフォークの20インチオーバーを意識したWATAKEロッドをマッシュルームトップで作った。最高の出来上がりだった。
このWATAKE783で10月の北海道を釣る。
 
 そして結論。
 
 たってのリクエストに答え、10本だけマッシュルームトップを作らせて頂く事にした。
 アキマルマニアの喜ぶ顔が見れるから。