私が唯一尊敬していたロッドデザイナー、Tom がアメリカ時間 6 月 12 日に急追した。
長年不治の病・筋萎縮症と戦っていた彼だったが、訃報は肺炎を拗らせてとの事だった。
Tomと亡くなる一ヶ月前迄、元気にメールでやり取りをしており、6 月 24 日 25 日のバンブーロッドイベント The Bamboo Rod Days 2017で会う約束、その時に何時もの様に自信の新作 HEXA ロッド3種を見せ、彼の家も訪問する事になっていた・・・・。
こんなやり取りの向こうのTomの元気な様子が想像出来ていただけに、突然の訃報は信じられず、ショックも大きかった。Tomの訃報を聞き、以後 6 月 20 日のアイダホ旅出発日迄、何も手に付かず苦しい日々が続いた。それでも何とか家人の協力で現実を認識、敢えて旅は実行、残された Tom の奥様 Gerri を元気付け、故人を偲ぶ思いで旅に出掛けた。
現地で共通の友人Per Brandin, Nelson Ishiyama, Tim AndersonやJohn Mcdaniel、そしてサンフランシスコのゴールデンゲートクラブのFrank やRouel、メンバー達との再会、イベントでの交流とそして一緒に鱒を釣る事で、Tom を偲ぶ事が出来、平常心を取り戻せた。
以下はこの傷心旅の中で Tom が改めて指し示してくれた希望の未来。
Tom が残してくれた未来のバンブーロッド世界への希望の" Tribute "
オーデルクリークで釣を終え、彼の愛車モビーディックの中で談笑。 |
Tribute その1
思うに世に言われる通り、人生は人との出会いであろうと私も思う。
其の事をTomとの別れで改めて感じた。
今日迄68年間、様々な人との出会いが有り、ある人は通り過ぎ、ある人は立ち止まり、交流が始まる。浅い交流も有れば深い交流もある。
私の人生の一部になり、大きく影響を与えてくれる、未だに親しい交流が続いている素晴らしい人達。
その一人が Tom 。
Tomとの交流が始まったのは 2013 年 6 月のThe Bamboo Rod Days 2013会場から。
其の前の年、同じギャザリングで彼の講演を聴いていた私は只の一般聴衆者、Tom はスーパースター、そんな距離感。その翌年、突然Tomが私のHEXAロッドを見せてくれと言って来たのが交流の切っ掛けだった。
それは本当に突然の,驚きのリクエストだった・・・その日 Per Brandin 始め100 本を超える有名プロバンブーロッドビルダーの作品が出展されている中で、唯一私の作ったバンブーロッドがレジェンド Tom Morgan を惹き付けたのだ😁
その場でロッドを披露、キャスト。その後日彼の家に食事に招かれ、バンブーロッド談義に花が咲き、お互いがバンブーロッドビルダーとして、ロッドデザイナーとして認め合う事に。この時話をして行く中,話す程に私は彼の人間的魅力に引き込まれて行った。
正面から見つめ合った時の Tom 眼光の鋭さ、笑った時の表情のやわらかさ。
筋萎縮症の麻痺した体で今尚現役の釣り人、現役ロッドデザイナーのTom。
健康体の私以上のオーラを放っている。それは正しく驚きと感動以外の何者でもなかった。そこで私の探究心に火がついた、人間として又バンブーロッドビルダーとして。
Tomは今どんなバンブーロッドを欲しがっているのだろう、それがどうしても知りたくなり無作法を承知で私は言ってしまったのだった。
「Tom、私はあなたの事を深く理解したいと思っている。そこで提案なのだが、今あなたが作りたいと思ってるバンブーロッドを私に作らせてくれないか?あなたの思うテーパーで、あなたの指定する竹材とスタイルで、私が製作する。其のロッドで来年一緒に釣に行こう!!」
つたない私の英語の突然の申し出でも気持ちは通じたのだろうTomが反応した。
やはりTomは まぎれも無く現役のロッドビルダーであり、私のリスペクト出来る巨人Tom Morganだった。
私はTomの目を正面から見据え、真の気持ちを伝えるべく言葉を重ねた。Tomの瞳が頷いた、Tomが私の突然の申し出を受けてくれたのだ。更に話す内にこの合同製作提案がよほど嬉しかったのだろう、涙を流し喜んでくれた。
これには私も奥さんの Gerri も貰い泣き、素晴らしいひと時、Tomと一遍に心が通じ合った瞬間だった。
そして一ヶ月後彼のオリジナルテーパーが私の元に送られて来た。
2014 年 6 月完成したHEXAロッド “Aki & Tom " で Tom の得意川オーデルクリークで、彼と一緒に釣を楽しんだ。
(この時のTomの心情と物語詳細はAKIMARUのウェブページhttp://www.akimaru.jp ----- PRODUCTS ------ AKIMARU/TOM MORGAN Rod ------- 説明文章中の誕生物語はこちら>>及び過去のブログ 10DAYS Vol.28 をご参照下さい。)
私の人生を賭けたバンブーロッドが,有名人Tom Morganではなく、真の人間 Tom Morgan に会わせてくれた。
これは私の永遠の誇りである。
Tom と私、すれ違う事も出来た、しかし互いが立ち止まり、興味を持った。その上で互いの人間性・好奇心と探究心から素晴らしい友情と優れたバンブーロッドが生まれ、バンブーロッドの希望の未来を暗示させてくれた。
Tom を思う時、人が人を惹き付けるのだと思う。人と人の結びつきが優れた物と未来社会を生む。Tom と友情を育めた私は幸せだと思う。
Tribute Rod
Tomが亡くなる一ヶ月前メールで約束した、今年 6 月彼に見せる事になっていたHEXAロッドが3本。
其の中の一本が第 6 世代に進化した" Aki & Tom " コラボレーションHEXAロッド。
2014 年Tomにプレゼントした第 1 世代HEXAはジョイントオス内にチタン丸棒PIN内蔵、このPIN素材が 6 角のカーボンPINに進化、ロッドの軽量化と同時にアクションのシャープネスが進化した第 6 世代HEXA。
そしてもう一本、これこそを、私からTom への Tribute rod 。
Tomから貰った"Aki & Tom "のテーパー以降、AKIMARU BAMBOO RODS全体のテーパーが総て変わった。2013 年まで25 年間追い続けて来た私の一番得意なヘンリーズフォーク用ロッド794 Henry's Fork Special HEXA。100% 完成したと思っていたこの得意のロッドでさえもTom テーパーに感化され数値変更を余儀無くさせられた。
以後3 年フィールドテストで練り込み、数値を大幅変更、今年春完成したロッドが Tomに見せる事になっていた New Henry's Fork Special 794 第 6 世代 HEXA。
WATAKE +第 6 世代 HEXバンブーフェルール+Tom 独特のテーパー感覚、この組み合わせで、バンブーロッド独特の腰のあるしなやかさとシャープネスが更に際立ち、持ち重り感が軽減され、進化してロッドが完成した。
今回The Bamboo Rod days 2017 会場で総てのビルダー、ディーラー、来場客がこの New 794 HEXAを大好評してくれた。中でもあのレジェンドバンブーロッドビルダーPer Brandinをして下記のごとく言わしめた・・・・・
----------Aki,
It is always so good to see you, either in Idaho or in the Catskills.
For me, there were two most memorable rods that I cast at this year's HF gathering; one was the Garrison 8 ft. 209 that Greg Wilson brought, And the other was your 7'9" for #4 line.
Perfect !! Super Great Rod !! Your rod was both(HEXA794 & HEXA764 Aki & Tom collaboration rod) smooth and very positive; I will remember its action for a long time. Lucky for me -----------
バンブーロッドビルダーとして、Tomに負け無い位鱒釣りが好きな釣り人として、尊敬する先生、Tom Morganへのリスペクトを込めた私からの Tributeロッド、それが第 6 世代HEXA、New Henry's Fork Special 794 Tom Morgan 享年 76 歳。希代の天才ロッドビルダーでありフライフィッシャー、そして何より人間として魅力的だった Tom。
一緒に釣った時のTomの言葉と笑顔がくっきりと思い浮かぶ。
“ Aki !! Let's Go Fishing ”
合掌
天に昇ったTomへの Tribute その 2 は ・・・・・
現在進行中の計画、アメリカで最も権威のあるフライフィッシング博物館
American Museum of Fly Fishing でのAKIMARU / Tom Mogan 合同展示。
これは次回 10DAYS で。