2018年2月18日日曜日

アキマルのフライフィッシング論

 今日はアキマル的フライフィッシング論(アキマル的バンブーロッド論かもですが・・)

 改めて思うにアメリカのHenry's Fork(以下HF)が私の一番好きな川であり、一番得意な釣り場。
 昔ヤマメ屋を自負していた当時宮崎県の大岩の山岳河川、シシ川に五年以上通い続けヤマメ竿を鍛えていたのだが、バンブーロッド家業が面白くなるにつれ、得意川はヤマメ川からこの Henry'sFork に一番川が変わって行ったのは必然。
 はっきりと理由が分かる。
① HFのマッチ・ザ・ハッチの釣がとにかく面白い。この釣こそが鱒釣りフライフィッシングだと思っている。バンブーロッドこそが鱒釣りに最適なロッドだと確信している。
② HFでの釣の経験を通じて、アキマルバンブーロッドの総てが進化し、整備される。
③ 日本国内での釣の様にストレスを感じない。
等々。
私の大好きなオズボーンブリッジの6月の朝。澄み切った空気感が生きる素晴らしさを教えてくれる。
1986年から欠かさず毎年1回、又は2回、多いときは3回、Henry's Forkのマッチ・ザ・ハッチの大物釣を楽しんでいる。
 日本のヤマメ川でも、同一河川でこれほど多くの釣行回数重ねた川はない。
 HFの中心ラストチャンスエリアならば良いサイズの魚の付き場所がほぼ頭に入っていて、HF初めての釣り人にもしっかりガイドが出来る。これは魚の付き場所が数十年変わらないという事。
 これは暴れ川が多く、釣ルール未整備、食文化の違う日本のストレスの釣では考えられない事。
 HFの川と釣が数十年良い状態で保たれていると言う証なのである。
 32年目を迎えた私のHF釣が未だに飽きない理由が其処にある。
 毎回新鮮で、心がリフレッシュされ、友人達との楽しい交流は回を重ねるごとに深まって行く。心からリラックス出来る本当に幸せな鱒釣りが此処にある。
 私のHF旅は10日から14日間、長い時で3週間。何度訪れてもハズレの釣が無い、ひたすら楽しい旅。が故に、唯一泣いた日が記憶に新しい。
 1990年代のある年、友人達と10日間程一緒に過ごし、私1人だけが仕事で残って釣った事が有った。9月の20日位だったと記憶している。
 友人達をボーズマン空港迄送った晴天の日の翌朝、目覚めるとラストチャンスは全体が薄い雪の白で覆われ、強風が吹いていた。HFは9月の半ばを堺に夏が突然次の日に雪日になったりする事が在る。私が残ったその時がそうだった。
 こうなると当然午前中は釣にならずふて寝。午後から何とかなるのではと川に立ったのだが、水温が下がった為か、捜せど捜せどライズは無し。待てども待てども太陽もライズも現れず。前日迄は沢山居た釣り人の姿が遥か下流に1人見えるだけ。
だだっ広いだけの強風のHenry's Fork 。グレイに覆われた空。
 一人川に立ち、私は何をしているのだろうと真剣に思え、只ただ寂寥感に震えた。
 しかし此処で終わらないのがHenry's Fork。翌日、川は小型の名フライ・ベイティスの大量派生。水面は黄色の絨毯と化し、ボコボコのライズになった。
 釣終えてやはり思った、“ あ〜あ仲間と一緒につりたかったな〜”・・・と。
 私の釣は親しい仲間、友人や家族とワイワイ言いながら、釣とライズをシェアしてこそ楽しいのだと。

 その昔私の著作本の推薦文の中で先生の芦澤一洋さんが言っていた。
1980年代 先生芦澤一洋さんと五月恒例の高尻川で。

「・・・釣り人には2種類の人がいて、秘密の場所を持ち1人で楽しむ人と、良い釣や良い魚が居たら仲間に紹介して一緒に楽しみたい人が居る。秋丸君は何方かと言えば私と一緒で、仲間に紹介し、一緒に楽しみ、どうだ!凄いだろ!!というタイプ・・・」
 又芦澤さんには同行したHF旅で、こんな事も言われた。
「アキマルのロッド技術は後輩達に伝えて行く事が君の役目だぞ」
 これを聞いた40代前半の若造は「わかりました」と答えたものの内心では「苦労して取得した貴重な技を何で他人に教えるものか!」と思った。
 これら先生の言葉に32年目のHF旅と人生の経験と重なって、69歳の私の姿勢を正させる。
 釣は仲間達と一緒でしか楽しめないし、私の人生を全うさせてくれる竹竿技術。その向こうに応援、お世話になった社会。
 私亡き後、社会の後輩達に私の技術や考え方が必要とされると信じ、伝えて行かなければと思うし、アキマルロッドのデータは確実に残して行こうと整理記帳を始めた。

 古人曰く『名人は1日にしてならず』だ。
 技術は作り手が誠心誠意頑張って、長い時間の経過の中で熟成され完成に近づけるもの。
 長く続けて行くには、制作者の不屈の努力と信念と見守ってくれる社会、応援者の存在が不可欠である。永きに渡り生き続ける物や技術は生き続ける事を望む社会が有っての事。
 フライフィッシング用バンブーロッドと言う道具も、良い釣り場と高い製作技術の裏付け無しには存在出来ない存在。又今後は情報やテクノロジーの発達に伴った、時代に沿った変化や進化がプラスされた、より良い進化型バンブーロッドしか残って行けないだろう事を確信する。
 後世に残って欲しい釣り場Henry's Fork とマッチ・ザ・ハッチのHenry's Fork鱒を釣る為のバンブーロッド。

 私はやはり自分で製作したベストのバンブーロッドで、仲間や弟子君達、そして家族と一緒に、ワイワイHenry's Fork を楽しみたい。
近い将来、子供や孫達ともこの楽しい釣をやりたいと願っている。