2023年10月8日日曜日

Spring Creek の幸せ Connetquot River

 鱒談会2023  

  鱒談会2023 無事終了しました。今回は自身では釣りをする時間もなく、初日は雨模様に早めの店仕舞い。2日目の日曜日、何時もの仲間と展示ロッド投げまくり会と成りました😎

 この日、竿屋として新しい発見。仲間のTさんが得意とする彼独特の大鱒釣り。目の前で次から次に超大型フライで、大鱒をガバガバ掛ける釣りは明快かつ驚異的でした。

 大型のフライを運ぶ為のロッド、ライン、リーダー、ティペットのシステムは当然#4の世界ではありません。奇しくも今年#5ラインの大鱒用バンブーロッドの考察を進めていた私には、非常に興味深い釣りでした。その昔の情報として、Mr.Garrison & Hoagy Carmichael  の時代=60cmオーバー鱒が普通に存在し、接着剤が現代のようには発達していなかった時代にはソリッドロッド6番というロッドの強さが普通にあったようです。この6番ラインの大鱒ロッドがこの日のT氏の大鱒釣りに重なるのです。私ならば6番寄りのプログレッシブアクションでWF5Fで、大型フライを4xもしくは3xのティペットで運べる7'6" 又は7'9"までの、持ち重りのしない、セミホローの大鱒竿をイメージしました。

 又湯原の楽しみが増えました。来シーズン#5ロッドの大鱒釣り、乞うご期待です。 



 会場になっている湯原ニジマス管理釣り場、通い始めて3回目のシーズンが終わり、アキマルの湯原仲間も増えて来ました。湯原愛に溢れた仲間の梅花藻移植運動も更に本格化して行きそうで、日本のフライフィッシングの希望の未来を感じるこの運動、是非皆さんも参加してください。

 次回鱒談会2024では初心者の方を対象としたバンブーロッドキャスティングチェック、タイイングデモ、水生昆虫採集講座などを仲間達と相談し始めてます。2024鱒談会、開催時期、内容は来年6月辺りお知らせ出来ると思います。是非遊びにいらしてください。

 Spring Creek の幸せ Connetquot River

 ここからが 9月のアメリカ旅物語。

 CatskillとNew York 郊外のLong Island の旅、行ってきました。先ずは、話は後先になりますが、旅最終日の Long Islandのエピソード。

 これは日本の Fly Fishingの現況とFly Fishing 隆盛 USAとの差を痛感させられた1日でした。

 New York州立公園内を流れる完璧なSpring Creek。素晴らしいとしか言い様の無い透明の流れと蛍光グリーンで揺れる水中の水草。自然の状態を保ちつつ、なおかつ心配りの行き届いた否の打ち所が無い釣り場環境。Fly Fishing 文化が完全に近い形で、大都会マンハッタンのすぐ側で根付いている事に驚き、更にはジェラシーさえ感じるNew York州のFly Fishing 事情でした。

 友人Chuckが言った「良い魚が釣れ、釣り人が喜び、釣り人が沢山来れば、地元に沢山の税金やお金が落ちるし、魚にも良い環境やルールが整備出来るんだから、日本でもやれば良いじゃん」この単純な言葉が大正解。なんで日本人にこれが出来ないのだろう?????

 先ず驚いたのが、74歳の私のNew York州ライセンスは$5。日釣り券ではありませんよ。年間ライセンスなんです😎 

 以下の釣り場写真は説明はいらないでしょう。鱒釣り屋には只々幸せな、釣りを完結させる事だけに集中出来た至福の時間でした。


 
釣り場エリア入口の FISHING PERMITS でライセンスを提示、定時になるまでこのゲートは開かない

パーキング横の受付事務所兼トイレ。博物館ではありませんぜ。
受付事務所で、予約しているプライベートエリアの区域の確認と釣魚料金を支払い。その日は4人で4エリアを確保。エリア内はその日予約した釣り人が独占できるプライベートシステム。

博物館では無いですよ。トイレの内部。

 朝8時、公園入口のゲートが開くのを待って入園。

 8時半、手続きを済ませ、流れの側のパーキングで着替えを済ませ、歩き始めると整備されていると分かる巨木の松林の森。

 ゴミ一つ落ちてない、松林とそれに続く雑木の森。踏みしめる枯れ葉の大地が、なぜかジワリと沈み又浮き上がる。奇妙な足元の感覚。味わったことのない不思議な大地。

 New York City の南端から、東に突き出た半島がLong Island。周りを大西洋が囲む、スプリングクリーク半島。川周辺の大地の下全域から水が沸いている為、ウォーターベッドの上を歩いている様なクッション感が有るのだ。

 歩いているのが Long Island の銘川 Connetqot River。コネティカット川は雑木の森に囲まれ、水草が繁茂し、美形鱒達がウジャウジャいた。人影が見えると魚の影が瞬間に散る。アップキャストではほぼ釣りは成立しない。20m以上上流からダウンストリームでフライをドラグフリーで流し込む、1チャンスの釣り。初めての私には馴染みのないこの釣りエリア。


 長靴を履かずスニーカーで1時間。足元のダニ情報も気になり、このダウンストリーム釣りは集中出来ず、ギブアップ。

 今旅の始まった9月13日から最終日まで、釣りは諸々の悪条件が重なり、釣りが出来たのが最終日19日の午前中僅か3時間。この日昼過ぎには翌日20日深夜便の帰国用意の為、Chuck宅まで帰らなければいけなかったのだ。正確には前半の8時半からの1時間半は右足首をダニに食われ、イマイチ乗れない釣りだった。まともに釣ったのは、後半のウェーダーを履いての1時間のみ。

 やはりウェーダーを履くと気持ちが違う。Chuckの友人Phillと歩くこと5分。釣り場の風景が最初の薄暗い風景から、明るい風景へと変わった。両サイドから被さっていた大木の枝葉が消え空間が抜けた。視界が間違いなく明るく広くなった。流れには蛍光グリーンの水草が、生命感を漂わせながら、沢山揺れているのが見えた。これこそイメージしていたLong Islandの Spring Creek だ。川幅は20m位?

 本物の釣り好き Phill に従う事、更に5分。カーブを右下流に曲がった先、対岸から突き出た枯れ木の下、蛍光グリーンの水草の隙間をPhillが指差した。

 そこには水草と同じ色をした魚が、水底で微かにヒレを揺らしていた。間違い無い大型レインボーだ。

   



 1m 幅のトレイルを降り、岸際水中に両膝で座り込む。水深50cmの砂地。
 私がその日選んでいたロッドは 6'10" #4  3pc ROX、ホームリバー湯原で大鱒を取りまくっているショートロッド 。その予想がドンピシャで嵌るサイズの流れだった。
 先ず結んだ毛鉤は超フラットの鏡面流れを意識した#18のスペントスピナー、ティペットは6xは無理、その鱒のサイズからして5x。
 魚までの距離は約10m弱?!
 キャストはリバースでしか投げれない。2m弱後ろには雑木の林の壁があるからだ。上に跳ね上げるバックキャストは慎重の上に慎重を期して、ソフトキャスト。
 1投目、2投目、3投目、4投目が対岸の枝にティペット・・・ミスだ・・・ロッドティップを静かにフリップ・・・・なんとか解けて毛鉤は水面を流れるが・・・・鱒の反応はゼロ。
 7回投げた#18のスペントは全く無視され続けた。5xも迷うも、ティペットは鱒のサイズを考えると細くは出来ない。
 魚は同じ位置でステイしたままだ。毛鉤を迷う・・・。
 此処の現場までのわずかな歩きの中で、名人 Phill が言ってたのが#10のグリーンのホッパー。手持ちで近いサイズの緑のバッタフライを結ぶ。
 大きくなったバッタ毛鉤を更に慎重にキャスト。
 バックが取れず、角度も決まったキャスト、魚の真上の枯れ木と枝の張り出しの下の僅かなスペースに、大型バッタ毛鉤のリバースキャストは、更に慎重を要する。
 1投目・・・・上手く入った・・・・流れ去った。
 2投目も・・・・上手くレーンに乗った・・・・・・しかし鱒に反応・・・・・無し。
 3投目・・・・枝向こうにフライが刺さる・・・・・ミスで終わりか・・・・なんとか藪からフライが転がり落ちた。ラッキー!!
 更に4投目・・・・上手くキャスト・・・・緑のフライが選んだレーンに乗った・・・・流れて・・・・魚が毛鉤を見た・・・浮き上がった・・・右腕が上がり掛け・・・・たが、魚が元の位置に戻った。
 フーウ!!
 止めていた息を大きく吸い込む。そして水中についていた両膝を、再度座り直し、気持ちを落ち着かせ、毛鉤を考えた。
 夏のフライは黒のテレストリアルが良いとChuckが言ってたのを思い出す。
 黒の大型テレストリアルならば日本の夏鱒の剛力釣りで得意の、#8 ラバレグ・アントだ。
 5xならば今日の魚までの距離だと、なんとかキャスト出来る。
 慎重にフライを結び、ティペットの傷も確かめる。OKだ。フロータントをオレンジのインジケーターに擦り込む。擦り込みながら視線は水中の大鱒をしっかり捉えていた。
 1投目・・・・・・上手くレーンに乗った・・・・・・フライが流れ始めた・・・・魚が顔を上に向けた・・・・動け!!・・・・魚の体が斜め上流側にゆっくり動いた・・・
 ビンゴ!! ロッドがしなると同時に水面が爆発した。
 魚が水草の下に一気に走った。
 ロッドを真横で絞り、魚の爆走を凌いだ。水草の下の入いられたら、負けだ。
 魚が方向を変えた下流に動こうとする。ロッドを右斜め、胸の高さで絞った。
 魚が正面奥の水草下に方向転換。ロッドを右下に構え直す。
 耐える、耐える、耐える!!
 ロッドブランクバット下部からグリップ内までロッドが極限近くまで曲がる、曲がる、曲がる!!
 ロッドを絞りながら、左横にいたPhillが流れを下流に10mほど歩き降るのが分かった。
 下流に直径30cm長さが3mほどの倒木が流れに刺さっている、魚は降れば必ずその倒木下に潜る。潜られたら魚の勝ちだ。その事を名手 Phillは熟知しているのだ。
 その直後、上流に走った大鱒はその場の浅さに走りを諦め、最初の藻の下に再び潜ろうとして止められ、やはり一気に大鱒が下流に走った。ロッドを目の上付近で上側に絞る。リールが鳴く。
 魚が走る、走る、はしる!!
 ロッドを絞る。フェザーウェイトリールが鳴き続ける!!
 Phillが魚を見つける。
 水面から魚体が飛び出る。やはりデカい。
 水草の下にラインが突き進む。
    Phillがネットを構える。
 魚の弱ってきたのが右腕に伝わってくる。少し魚体が浮くのが分かる。
 ロッドを低めに絞りながら、魚体を流れ中央に誘導。
 Phillがネットを水中に差し込む。
 それを見てロッドの絞りを緩める。
 魚が下流に動き、案の定下手で構える Phillに向かう。
 そして・・・・Phillが内径22"のネットを掬い挙げた。

 完璧なショートストーリーが成立した。
 Phillの22"大型ネットの中で魚体を撓ませながらもがく大鱒が見えた。
 水中に魚を沈め落ち着かせ、フックを外す。
 ヒレピンの完璧魚体が光っていた。
 Phillとこれ以上無い力強い握手。双方とも興奮で顔はグチャグチャ😎

 Chuckに携帯を渡し、素早く記念撮影。
 数秒後、24" のレインボー鱒の魚体がゆったりと水草の下に消えるのを見届けて、再度全員で握手。
  
 そしてPhillが言った「もっとやろうAki」この言葉に一瞬迷ったが、敢えて此処で終わる方が全て上手く行くと思えた。
 「有難う。しかし今日は午後から帰国の荷物作りがあるから、此処でやめておくよ」
 Phillともう一人の友人Tomも、もう少しやろうと再度勧めてくれたが、敢えて釣らなかった。


 そこまで旅で予定していた釣り日数4日間の内、3日は流れていた。しかし釣り以外の目的、
  ◉ Catskill 博物館スタッフとのAKIMARU Exhibition の打ち合わせ
 ◉ HARDYの名手John Shanerの804HEXAとGarrison ロッドに関する比較批評
 ◉ Hoagy Carmichael のHoagy Special 764/5 HEXAの好評
 ◉ Chuckの友人JohnとCatskill 博物館館長Anthony からのHEXA ロッドのオーダー
 ◉ NYでしか買えない工具の買物や、銘木リールシートのアメリカ滞在中の受け取り等
 予定していた目的が想像を超えて上手く行っていたのだ。  
 Phill 達には来年又一緒に釣ろうと言う事で、納得してもらったが、内心は、これ以上良いサイズの鱒を釣ると、バチが当たりそうだと思った自分もいて、敢えてこの日は釣りをやめた。それで全て良しの旅になったと言うわけだ。

 旅の主目的、Catskill 博物館のAKIMARU Exhibition 開催の最終結論は、博物館がスポンサーの応援や博物館会員のサポートで成り立っている慈善団体である事から、展示会開催のYES NOは10月末のスポンサー理事総会でしか、結論が出ないのだ。
 あと3週間、とにかくスポンサー理事会の展示会に関する最終結論を待つのみ。

 次回10DAYSはアメリカ東部のバンブーロッド事情に関する感想などをお届けします。乞うご期待!!

AKIMARU BAMBOO RODS
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