2023年10月22日日曜日

Eternal Theme

 Eternal Theme

 ・・・・1987年 37歳の若造が打った雑誌広告のコピーが『Garrisonを超えた竹竿』

 このコピーを見て、誰もが彼をホラ吹きと馬鹿にし、只々嘲笑した・・・・しかし当の本人は、しごく真剣だった・・・・。

 時は過ぎ、奇しくも37年経った2023年9月、舞台となったのはNew York

 ・・・・彼と会ってからジャスト1ヶ月、心待ちにしていたメール が New York から届いた。

 彼に最初に会ったのが 2018年10月1日。New York の中心部マンハッタンにある超名門のFly Fishing Club  "  The New York Anglers club " のネクタイ着用のClub Houseでの公式ランチ。彼からの招待だった。その時、彼の依頼で、当時の第6世代 HEXA バンブーフェルールロッドをお披露目し、いたく感動してくれたのだった。

 あれから5年、今年2023年9月16日、やっと彼と再開出来、New York郊外の芝生広場で進化型、第9世代(最終型 ) HEXAや Garrisonロッドなどのキャスティングを楽しんだ。

 当初は2019年の春、Catskill で釣りを一緒にやる約束だった。しかし彼が81歳だった2019年初めに癌の手術をやり、その年春の釣り計画が流れた。手術の経過は良好だったが、2020年コロナ騒動が始まった。コロナ騒動でバタバタしている間は、彼との釣りも諦めていた。所が2022年春、彼の体調が戻り、釣りを始めていると朗報が親友Chuckから届いた。それを聞き、先ずは体調回復を喜びあい、メールのやりとりを再開、快気祝いのロッドをプレゼントする事にした。

 彼のリクエストは7'6" HEXAの5番の2pcのTROUTロッドだった。オリジナルのSpecial Rodを1年半掛けて製作、修正。そして再度フィールドテストまで完了し、完成したのが 7'6" HEXA の2pc  5番では無く4番のTROUTロッドだった。

 彼からの便り

 私も含めた日本のバンブーロッドファンの為に、彼が 764 HEXAロッドの感想を、文章化してくれた。以下が彼からの感想文である。

 

Hello Aki:


Well, finally I have put my backside in front of this computer to tell you how much I have enjoyed casting the 764 HEXA rod that you made for me, and so kindly gifted to me over a month ago. Knowing what it takes in terms of time and effort to make a bamboo fishing rod, I am very grateful for your generosity. The trout season has been closed for several weeks, but be assured that the HEXA will be on the Beaverkill next spring.

I especially like the way that rod performs when casting the WFF line short distances. Too many rods I have cast don't begin to perform until there is thirty feet of line in the air. For me, your rod does both, as it will cover a fish effortlessly that is less than twenty feet from your waders, and yet can chuck sixty-five feet of line with ease. That is a sure sign of a rod that has been designed for actual fishing conditions, and not just for the person who often casts too far for fish that he/she probably won't hook.

And, it goes without saying that the workmanship on the rod is first class, and then some, with a ferrule engagement idea that is unique and ingenious. I only wish that Mr. Garrison were alive to see the new ideas and work that men like you have created. Many of today's rodmakers have taken the craft to new levels, which is to be expected, and I am often reminded of how Mr. Garrison's ideas, illustrated in the book, may have sparked men like you to vault past what he and I did and bring rodmaking into the 21st century. Your ideas and work exemplify that progress, and I am proud to own one of your trout rods.

You may use any of the photos that are of me casting, or of us together. To some, it may appear that I have cast a for rod before, and if that is the case I am happy. 

Again, many thanks for the rod that you presented to me. I love the "Hoagy" that is embossed on the leather hood that sits on the top of the rod tube, and I assure you that that hood will be removed many times before it is my time to fish around the bend.

Stay well.

Hoagy


 
 Hello Aki
 
 さて、1ヶ月以上前に贈っていただいた 764 HEXAのキャスティングがどれほど素晴らしい ものだったかをお伝えしたく、 ようやく今、 筆を執りました。 
 バンブーロッドを作るという事がどんなに 手間と労力の掛かる事であるのか、 深く共感しているだけにこのご好意に心から感謝しています。 
 トラ ウトシーズンが終了して数週間が経ちますが、 来春にはHEXAがビーバーキルに登場することで しょう。 

  764HEXA について、特に気に入っているのは、 WFラインを使って近距離にキャストした時のパフォーマンスです 。 
 これまで沢山のロッドを手にしてきましたが、 どのロッドも30ftほどラインを出すまでは中々仕事をしないものです。 
 比べて764HEXA は、足元から20ft ほどの魚でさえ正確に狙えますし、 65ft 先の魚にもフライを届けられる のがこのバンブーロッドです。 
 おそらくフッキングしないであろう魚のために、一生懸命ロングキャストして いるような釣り人の為だけの竹竿ではないようです。 
 実際の釣りを想定・体験し、いかに真摯に竹竿 作りに向き合っているかを感じざるを得ません。

  又、この764HEXA の道具としての完成度も一級品であることは勿論ですが、 独創的なHEXAフェルールの構造もまたとない逸品であることも言うまでもありません。
 願わくば、Mr.Garrisonが、あなた達が創り出した新しいアイデアや仕事を見たらどれほど感動されたでしょう。
 現代の多くの竹竿職人は竹竿作りを新たなレベルに高めており(勿論この事は期待していた事ではありますが)Mr.Garrisonのアイデアがあなたの様な人々に刺激を与え、私達のやって来た事以上の竹竿作りを21世紀に繋げている事を嬉しく思います。

 あなたのアイデアと作品はバンブーロッドの未来そのものであり、この764HEXA を今、手にしていることを誇りに思います。

 もし必要でしたら、先日撮った写真を使っていただいても構いません。 この竹竿が手に馴染んでいるように見えたら嬉しいですね。

 素晴らしいバンブーロッドを贈っていただいたことに改めて深く感謝いたします。 
 ロッドチューブ のレザーに印字された "Hoagy "の文字は私のお気に入りです。 きっと次のシーズンまでに何度もキャップを開けてしまうことでしょう。 

  それでは、 お元気で。
  Hoagyより  

(文中の30ftは約9m、20ftは6m、65ftは約 20m)



   Garrisonが使っていたパーソナルロッド209のプログレッシブベンドとHoagyのリラックスしたキャスティング

Hoagy Special 764 HEXAと気に入ってもらえたケースキャップのHoargyの印字

 メールの主はバンブーロッド界のスーパースターHoagy B.Carmichael その人。

 私はこれ程、的確なHEXAロッドの分析感想を聞けた事が今まで無い。

 彼の解析通り、私はこの764HEXAを12匹の 50cm~60cmの夏の剛力野生鱒で完璧なフィールドテストを終えている。又彼の分析通り、私が意図した最も大事なHEXAロッド主旨が『AKIMARU Bamboo Rod HEXAはFishing Rodである』という事。又、私のHEXAとバンブーロッドの未来に対する思い、その思いが具体的に明確に理解して貰えた事を、誇りに思っている。

 しかし、それにしても Hoagyはカッコ良かった。

 キャスティングを楽しんだ後、近くのレストランで軽く昼食をとった。そこで新機軸のFLY BOXをHoagyや友人Chuckに見せていた時の事だ。BOXの中にあった8番の一見ゴキブリ風の黒いテレストリアル毛針を見つけたHoagyがニヤリと笑いながら、それをテーブルの上においた。そして近くを通っていたウェートレスの若い娘に声を掛けた。

 「お嬢さん、テーブルにこんなモノがいたんだけど?」

 ウェートレスがそれを見て一瞬驚いた、しかし近寄って来て、再度確認して、皆で大笑いした。

 食事を終え、駐車場でお別れ。するとHoagyがBMWのバックドアを開け、透明のビニール袋に入ったシャツの様なものを取り出した。それを私にプレゼントだと言って渡してくれた。それは白地にアメリカ国旗がほぼ全面に描かれた、中々に派手なゴルフ用ポロシャツだった。

 「WOW !?  Thank you 😎 キャプテン・アメリカ?」

 それに答えて、Hoagyが私の頬をゲンコツで撫でる様にして、笑った。

              

 Hoagy は 85歳、数日後にカナダまでアトランティックサーモン釣りに出かけるとの言っていた。まだまだ元気な人だ。

 Hoagy B.Carmichael  正しく私のヒーローであり、私の永遠のアイドルである。そして、私の永遠の『SENSEI』であり続けて欲しいと思う。

 ・・・・・2023年 私も74歳になった。奇しくも人生の真半分をバンブーロッドビルダーとして生きて来た事になる。今は昔37歳、向かう所敵無し、世界は常に自分を中心に回っていると思っていた頃が懐かしい。

 追記
  Catskill博物館の打ち合わせ模様や、今回のHaogyとのHEXAやGarrison のパーソナルロッドに関する物語は次回10DAYSでお贈りしますのでお楽しみに😎