2017年10月10日火曜日

大鱒釣り道具の話 その1  

 今年も予定していた10月初めの北海道釣旅が、身内の不幸で中止に成った。
 今日はこの北海道大鱒釣りで使う予定だった道具の話。

 Life Staff

 今年6月、米国 Henry's Fork の下流、アシュトン地域の荒瀬のブラウン釣での出来事。
 去年迄何ともなかった川幅100m強,深さは腰下位の荒瀬の徒渉。
 今迄一気に斜め下流対岸迄行けていたコースで何度か立ち止まり、体勢を整えなければ行けなかった。何時もならば暗くなるPM9時迄釣るこのポイントを、安全を考え、明るい内に引き返したものの、流れ中央でバランスを崩し、ベストの左身は水浸し、何とか岸に辿り着き、ベストの水を絞り、釣は最後迄やったものの、ちょっとショックだった。
私もいよいよ歳かと・・・😢
 この事を帰国後10程歳若い健脚の友人に話した・・・と彼曰く『私達北海道釣ではウェーディングスタッフを去年から使ってますよ』と簡単に言ってくれた・・・ウン?
 去年2016年6月一緒に釣ったアシュトンでは彼はスタッフは使って無かった筈?
 私達の意味には仲間の40歳代の前半の凄腕名人衆も含まれる・・・・ウン???

 無用の道具?
 その昔、1986年私の初めてのアメリカ鱒釣り旅。
 連れて行ってくれた師匠の芦澤一洋さんの推薦で、小継ぎの金属製ウェーディングスタッフを釣初日に購入。
 当時芦澤さんが確か47歳、私が37歳。どちらも現役バリバリ。
 芦澤さんに至ってはアメリカ鱒釣りのエキスパート。その彼の薦める道具ウェーディングスタッフは日本国内釣では縁の無かった道具。彼が持つと何故かカッコ良い、その時はエキスパートの師匠の薦め、これはアメリカ鱒釣りの必須道具なのだと即購入した。
 当然初日から荒瀬のマジソン川、ギャラティン川、Henry's Forkラストチャンスエリアで使った。ところが旅が進み、廻りを観察する余裕が出て来ると、現地アメリカ人釣り人達は余りスタッフを持っていないのだ。たまにトレイルを歩く老齢のレディが使っているのを見かけただけ。私自身も同じ場所の徒渉ならば、2度目はスタッフは要らなくなっていた。芦澤さんも観察していると常にスタッフを携帯はしているが、荒瀬でしか使っていないのが分かり納得、旅の後半にはスタッフの携帯も止め、帰国後誰かに譲ったものだった。
 以来31年、今年の6月のアシュトンの荒瀬徒渉時までウェーディングスタッフの事等考えた事も無かったのだが、帰国後市販のウェーディングスタッフを捜して居る自分がいた😁
 しかし気に入るデザインのものは皆無。この途中、私と同じ歳の北海道の友人が以前から川側に落ちている倒木を徒渉の際,杖として使っていたのを思い出した。その友人にアシュトンでの経験と市販のスタッフの事を話すと、
『アキマルさんに市販のスタッフは似合わない。川側の倒木の方がカッコ良い』等とおだてられ一旦はその気になっていた。
135cmの第3の足

 それでも釣現場に枯れ枝が無い事も想定、確実を期して市販の物を捜した。
 ウェーディングスタッフの代用をしてくれる登山用ストックや、銘木スネークウッド材の超高級杖等迄、気になり調べたのだが、どれもこれも今一ピタッと来るものが無い。まあ良い、友人の奨める倒木の杖で今回の北海道はやり過ごそうと決めた。
 それから1週間程経った朝、工房の隅に硬木材、太さ3cm、長さ180cmの角棒が目に入った。リールシート用にとっていたブラックウォールナットの銘木材。
 瞬間これだ!!と思った。
銘木ブラックウォールナットのグリップ廻り
リネンのワックスコードで滑り止めと飾り巻き
3mm径の革製ストラップとブラスの止め金具、6角竹製ボタン。
写真下 ステンレス製石突き。本体仕上げはオイルフィニッシュ

 第3の足 
 市販品に気に入ったものが無い、ならば作る、これがアキマルの釣道具の原点!!
 毛針に始まり、フィッシングベスト、グラファイトロッドからランディングネット、木製フライボックス、振り分けバッグベスト、そしてバンブーロッドに綿製ハット等々、自分が必要と感じた道具を、自分のデザインで、自分の手で納得の行く完成度迄、道具を追求する、それがアキマルの原点。
 ウェーディングスタッフに対する拘りも同じ。
 現在市販の小継ぎのカーボン製やアルミ製ウェーディングスタッフ、何処のメーカーの製品もほぼ同じデザイン。これは昔の実体験や現行市販品現物見聞、使用者の感想意見等々、調べれば調べる程、どうしても好きになれそうに無い。
 無いならばきっぱり諦めて、スタッフの要らない釣ばかりを今後はやるか?ハタマタ我慢して市販の金属製小継ぎのスタッフを使うか・・・・・いやいや、無いならば作れば良い、そう考えたのだ。

 本体は銘木の硬木で丸に近い楕円の1本棒、座頭市の仕込み杖のイメージだ😁
 ウォルナット、楢(オーク)、ビーチ等の気乾比重の高い、目の詰まった硬木・銘木が良い。
 (気乾比重とは材を乾燥させた同じ体積の水の重さと較べた値。木材の硬さや強度を表す。数値が大きい程重く強度に優れていて、値が小さい程軽い。ちなみに以下が各素材の気乾比重。ウォルナット0,63~65  楢0,67~70  ビーチ0,72)
 18mm径位の細身の硬木素材で有れば、比重も重く、水中に鋭く刺さる。
 軽く携帯も楽。ちなみに私用に作ったスタッフの重量はウォルナット製で255g、市販S社のカーボン製が318g、アルミ製が407gと較べても軽い。
 オイルフィニッシュの木製であれば水切れも良く、乾燥も楽。
 強さも曲げ強度も強い。
 本体のオイルフィニッシュはバンブーロッドの仕上げと同じ。テイストも同じ世界観で上がる。メンテナンスオイルで傷付いた部位の修復も簡単に出来る。
 グリップは麻糸のワックスコードで滑り止めと飾り巻きを施す、使い込む程に美しく輝くだろう。
 革製ストラップの先にクラシックな止め金具をつけ、ベストかウェーダーに繋ぐ。
 釣時は流れに浮かべて置く。
 残るは飛行機移動時の荷物預けの点。只私用の範囲は特に問題を感じない。
 先ずは敢えて一本物銘木スタッフのテイストを優先。携帯で問題が出たらその時解決すれば良い。
 気分の乗った時は一気に絵が出来上がる。
 先ずは私用のスタッフ、身長175cm~180cmに合わせ具体的なサイズとデザインを決め、ウォルナット材で早速製作開始した。
 思い描いた絵の通り、良いスタッフが1ヶ月後完成した。
 翌日、増水した近くの川でテスト。結果、水嵩と水圧が増した、滑る底石の川でも第3の足=ウェーディングスタッフの効果は絶大だった。

 アキマルバンブーロッドと同じテイストのNew タックル " Life Staff " が完成した。

 只、一つだけまだ気に掛かる事が自分の胸に有る。
 徒渉の際スタッフを使う自分を受け入れる、釣り人としてのプライドと美学。
 それが私に取っての問題なのだ。(そんな自分をちょっぴり好きな自分も居る😁のだが・・・)

 アキマルは再来年古希を迎える。
 Henry's Forkは85までやりたい、いやHenry's Forkで最後を迎えたい・・・と考える今日この頃である。
Life Staff  にご興味の有る方はアキマル  info@akimaru.jp までご連絡下さい。ご意見お待ちしています)

 次回10DAYSは10月20日公開予定。60cmオーバーの大鱒用HEXAバンブーフェルールロッドの話。