2024年7月21日日曜日

竹竿家の風景 微々たるもの

  竹竿屋の風景 微々たるもの

 此処数年視力の衰えから好きな読書を2年ほど完全にやめていた。バンブーロッド作業用の視力の温存のためでもあるのだが、一月ほど前、たまたまではあるが病院の診察待ちを考え、持参していた自作の文字級数の大きな本を退屈凌ぎに読み始めた所、30分以上夢中に読んでいたのだ。若かりし頃の自分の無茶ぶりが懐かしく、昔の若いエネルギッシュな自分が面白かったのだ。30分以上、本を読むなど数年ぶりの事で、昔の読書の興奮が蘇った。その読書の麻薬の味を思い出し、プロの文章家達の書いた昔の釣り本を探し出し、改めて読む事が始まった。やはり何しろ読書は映画と一緒で楽しいに尽きる。その流れで改めて気づいた事があったので今日はその話。

 当たり前の話、やはり本物の文章家が書く文は上手さが違う。改めて自分が文章作家では無くバンブーロッドデザイナーである事に、一種の安堵を覚えた。同時に面白い事にも気がついた。文章家達の物語もほんの微々たる事象を、膨大な物語として如何に上手く発酵・熟成させるか?!その微々たる事をどう料理するかで、物語の良し悪しとプロ作家の力量はほぼ決まるのだろうと思えた。

 微々たるもの、その事に拘る大事さは私のバンブーロッドデザインでも同じ。微々たる疑問から始まり、その疑問を解決する為の創意工夫作業の繰り返しでロッドが進化、結果一本の新作バンブーロッドが生まれたり、今まで存在しなかった新機軸のバンブーロッドを生み出す物語になる、そう言う信念の元、数十年バンブーロッド・ デザインを続けている。

 私が1987年に最初のソリッド製 6角ブランクのバンブーロッド 7'4"  #4 の金属製パイプフェルール製の2pc の完成時に、感動と同時に感じたモヤモヤ感、そのモヤモヤを未だに引きずっている。

 それは、金属製パイプフェルールの直線部位に関しての疑問だ。この直線部位が靱ったら、バンブーロッドのアクションはもっと良くなるのでは・・・・???。靱らない理由はすぐに理解出来た。金属製ジョイント部位は物理的に曲がらないのだ。当たり前だその金属部位が曲がったら、差し込んだジョイントは抜けなくなるのだから。それでも金属製ジョイントのバンブーロッドがワールドスタンダードとして100年近く続いているのも、バンブーロッドという天然素材道具の面白さなのだろう。

 200cm以上の長さのロッドの中に5cmの曲がらない部分が存在しても、それは微々たる問題。希望の距離を美しいラインで投げる事が出来、山女魚岩魚の繊細な動きに追随し、尚且つ剛力鱒の力を吸収して、上手くランディングまで完結できるフィッシングロッド・・・それでバンブーロッドは完結出来ている・・・。2024年の現在でもワールドスタンダードで銘竿と言われるほぼ全てのバンブーロッドが金属製パイプフェルール・ジョイントロッドなのだ。

 でも私は、バンブーロッドのジョイント部位を靱らせたい・・・・バンブーロッドデザイナーとしての私の希望と拘りとその解決への挑戦は13年目を迎えている。

2024年 今年の764 HEXA

 今年4月、764 HEXA  (去年秋、バンブーロッド業界の生きるレジェンド Hoagy B.Carmichael の為に製作し、納竿した764 HEXA バンブーロッド 7'6"   #4   2pc  = ジョイント雌の端口に正6角形で、幅12mmメタルチェックを装着したHEXAトラウト ロッドと全く同じ仕様)で55~65cmの大鱒を数匹、ほぼ納得の行くロッド状態でランディングした。

 そのテスト結果を踏まえて、デザインを実験・改良 、5月新作の764 HEXAが完成した。

 5月18日 快晴

 陽の上がった駐車場広場で繋いだ 新作の 764 HEXAの2pcを、車に立てかけ、ウェーダーのベルトを直していると若い相棒が話かけてきた。

「これが新作の764ですね。」

 若い相棒の顔に投げてみたいと書いてあった😁

『おお、そうだよ。振ってみて良いよ。投げてみなよ』

「良いですか?!😎😁 では投げさせてもらいます。ラインは?WF4F?」

『そう、コートランド のSYLKブランドのWF4F 』

「ではでは」・・・・若い名手がキャスティングし始めた。

「へー?!・・・・・これって4月の764と違う感覚ですね・・・・え?!なんなんですかこのラインの伸びは?!?!・・・・・3ヤードから5ヤードはハッキリ違いますね・・・・」

『でしょ!!😎』・・・・・・・・。

「不思議な感覚ですね・・・・・・・・これが先日話されてたロッドなんですね・・・・・・ヒェ〜?!・・・・違いますね〜・・・・ありがとうございました」

 『イエイエ😁・・・・では私も投げさせてもらいましょ』

 この日と翌日、この新作764HEXAを二人で交互に使いテスト釣り。野生の大鱒56cm〜64cmを合計6匹ランディングした。

 4月の764 HEXAのメスの端口に装着していた6角の金属製チェックを取っ払い、幅1mm強のラタンを3重に巻いた。キャスティング時のラインの伸び、そしてロッド全体のベンドカーブの美しさ、大鱒対応時のパワーと粘り、加えてジョイント部位の外観の佇まいと美しさと強度、そしてジョイント部位の確実な靱りを意識した。

 この新作 ラタン仕様 764 HEXA バンブーロッドにたどり着くまで、37年掛かった。

 37年前の疑問とモヤモヤ感、バンブーロッドのジョイント部位が靱ったらアクションが良くのでは???その答えらしきもの?が新作 ラタン仕様の764 HEXA に見えた様に思える、まだ確信は無い。

 7月27日28日、若い相棒とラタン仕様 764 HEXA  を意図的に、切れない3xで、夏の剛力大鱒で、HEXAジョイントの強度の最終テストをする。



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2024年6月19日水曜日

今は昔、白い山女魚

 数年振りの佐賀県・背振の川

 先日、久しぶりにTVの番組取材を受けた。その番組は福岡と佐賀の職人さんを特集した朝日TV系列の 「 STORY 〜未来に残したいふるさとの風景〜」という5分間の番組。過去の番組画像が美しい事、職人の言いたい事、伝えたい事を短い時間の中で上手く表現出来ている事、などから取材を受けることにした。その向こうで来年5月開催のCatskill Museum でのAKIMARU HEXA Exhibitionの宣伝意図も考えての番組成立である

 サブタイトルの 「〜未来に残したいふるさとの風景〜」 から即、頭に浮かんだのが今の釣り仕事を始めた1981年、製作したIDENO Special というロッド名。そのIDENOというのは佐賀県背振山の山麓里 “ 井手野 ”  の地域名から命名した事だった。その井手野地区は佐賀市に抜ける名流・嘉瀬川の支流原流域。流れの水は限りなく透明で、大小の花崗岩の間を優しく流れる山里の川。川底も花崗岩の砂礫層で白く、常時陽が当たる陽性の天然山女魚の川だった。当時は山女魚釣りのフライキャスティングが充分に可能な広さを持った理想的な里川風景の山女魚川で、毛鉤を加える天然山女魚はバランスの良い体型の真っ白な魚体に赤い鰭の、それは見事な山女魚ばかりだった。


 その井手野地区の山里の風景、その間を流れる透明な渓流の風景が、番組のタイトルに繋がった。

 しかし今は昔、この三瀬・井出野地区の山女魚の川は、この20年の度重なる風水害による護岸工事の連続で、右岸は舗装道に沿ってコンクリートの護岸壁、左岸は人が入る事がない様子の大人の高さほどある青草の草林の連続が、小さな川にかぶさっていた。探す事1時間半、1箇所だけ適度の空間を見つけた。対岸に杉林と雑木の林、その前のスペースだ。足元草藪向こうからは流れの水音が聞こえる。足元の草薮を分けて下まで降りて行くと、其処には懐かしい流れが白い川底を見せながら、透明に広がっていた。この部分を切り取ればイケる。その上流500mの位置に広がる真竹の大きな竹林も、バンブーロッドの使用材料として撮れる。何とか残っていた私の原風景に、ちょっぴり安心し、TVクルーに撮影可能の連絡を入れた。

 余談ではあるが、その場所ではキャスティングのカットだけ撮影したのだが、撮影の合間、毛鉤を数回投射して見たら、何と5〜6cm程の小山女魚が毛鉤に飛び出た。この事は、山女魚が細々ではあるがまだ世代交代はしている証左なのだろう。心の故郷はまだ小さく健在である事に少し胸に響くものを感じて撮影を終えた。

KBC TV    番組名 「STORY 〜未来に残したい ふるさとの風景〜」 

放送日 2024年6月23日 日曜日17:55 ~     放送対象地区は九州域  

◉放送終了後はYouTubeで見る事が可能です。


私のFly Fishing 観

 この井手野の川の変わり様を目の当たりにした時に、やはり日本の山女魚釣りを改めて諦める自分がいた。山女魚の生存出来る真面な渓流は今も姿を消し続けているのだ。その向こうで細くなってはいるが、流れの透明度は昔のままで、花崗岩の砂礫層の白い川底も埋まり、浅くはなっているが健在なのだ。この環境要素とセットであったはずの山女魚の気配が無い・・・とは言わないまでもその存在感が非常に薄いのだ。

 原因は地球規模の異常気象の影響=台風、大雨など風水害の河川や自然環境被害にプラス、地震国で、国土の小さな日本の自然は軒並み大きな打撃を受けているのは間違いない。

 その風水害からの復興計画=人間の命優先の思想の前には天然山女魚、岩魚の生存・存続主張の意見など日本社会では軽視されるのが常であろう。ましてや外来の虹鱒の環境など論外だろう。38年前に自署で書いた通り、日本の天然山女魚、天然岩魚の存在は、今後もその存在は間違いなく薄くなっていく。たどり着くところは希少種に指定され、保護の対象魚種になっていくだろう事を予想する。そうなるしか天然山女魚岩魚の存在・存続はないだろう。勿論天然魚は希少・保護種となり釣りの対象魚では無くなる。その覚悟は出来ている。それが天然山女魚岩魚の種の存続にはベストだと私は思う。

 釣りの対象ならば、養魚場で飼育された放流山女魚で良い。彼らと里川で遊ぶ事ができればそれで十分。ただその里川が山女魚の住める水質と環境がどこまで保てるかという危惧しか無いのだが・・・

 今の大鱒釣り

 今はバンブーロッドの本質を更に追求する為と Fly Fishing の楽しさの極み“マッチ・ザ・ハッチ”の大鱒釣りに嵌っている。人生残り少ない時間、最後の日までやり続けるのがバンブーロッド製作と大鱒釣 Fly Fishing だろう・・・・・な〜んて言ってる時間はない、明日からの大鱒釣りの準備があるので、ここで失礼😎


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2024年6月2日日曜日

進化型HEXA情報!!

 

 AKIMARU BAMBOO RODS   Webページ、リニューアルしました。

 HEXAロッドの進化が進み、同時にロッドデザインの変更に伴うインフォメーションの変更です。

 HEXAロッドのジョイント部位デザインを進化させました。

 バンブー製オスは以前とほぼ変わりませんが、メスのデザインを改良し、ロッド性能が更に向上しました。

 メスの端口に12mmから15mmの6角製メタルチェックを装着、その下部の6角ブランク25〜30mm幅にメタルラインのクロス巻きでジョイント部位の強度を保持し、尚且つそのジョイント部位をベンドさせる様にデザイン。

 キャスティング時のアクション伝達がよりスムーズになり、ロッドが大鱒の暴れを吸収し、ランディング性能が更にアップしました。

 先ずはAKIMARU BAMBOO RODS  New Web ページご参照下さい。

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  http://www.akimaru.jp




 
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2024年5月20日月曜日

バンブーロッド・デザイナー


  モンタナからやって来た Jim Dawsonは4月19日から21日まで日本の鱒釣りを楽しんだ。

 アメリカ人の釣り

 Jimのキャストは、モンタナの名流マジソン川で毎日釣りをしているという彼の言葉を裏付ける、力の抜けた釣り慣れた優しいキャスト。フィッシングベストは着てない。小さなバッグを肩からかけている楽なスタイル。だがバスケットを長年やって来たほぼ2m、100kg超の62歳のガタイはゆったりした動き。表情は川にいるのが一番幸せという釣り人のそれ。

 Jimが毎日釣っているのが、世界で一番魚の密度が高いというマジソン川。日本人釣り人にある魚に飢えた感がJimには見え無い。

 初日のこの日、私が2時間ほど相手をしたが、どれも神経質な動いている散発のライズばかり。ガイディングを午後から名手T君と交代。

 しかし、この日のライズは午後も渋ぶかった。


 川の中のゴミ

 PM3時を過ぎた頃、ちょっと焦りを感じ始めた私は、パーティのモチベーションを上げるべく、二人が釣った後の場所で 7'0" #4  HEXA に 5x ティペットで55cmのオスの虹を1匹釣って見せた。T君もJimの釣った後のポイントで、数分キャストして 60cmオーバーを7'4" #4 のアキマルバンブーに 6xティペットで、Jimの目の前で取って見せた。そこでJimの目の色が変わった。

 しかしその後も Jimには魚の反応は渋いまま。マッチ・ザ・ハッチがセオリーのこの川の大鱒達は、初めてのJimには厳しかった。

 この日は夜7時まで、ライトが無いと足元が見えないくらいまで、T君とJimも粘ったが鱒がJimの毛鉤を咥える事は無かった。

「明日!!明日!!」

 ホテルの夕食を食べながら、Jimの感想を聞いた。

 今日は本当に楽しかった。魚の凄い大きいのがいるのは分かった。でも釣れなかったのは悔しい。こんな小さな川にあんな大きな鱒がいるという事、本当は信じて無かった。あんな短いバンブーロッドであんな大きな魚が取れる事は信じて無かった。でもAkiの言ってた事は嘘じゃなかった。ほんとだった!明日絶対取るよ!。本当にありがと、ございました。乾杯!!

 Akiがこの川と鱒を大事にしたいという気持ちは良く分かる。こんな小さな川だったら釣り人が多く来たら、すぐ駄目になるでしょ。それは良く分かるですね。本当に大切な川ですね・・・・今日ちょっと残念は川に中にゴミがあった。あれは駄目ですね・・・・・。

 やっぱりね。

 その昔1986年最初のモンタナ、アイダホの釣り旅時、私は10日間の旅の間、毎日現地の川周辺と、川の中にゴミを探して回った。日本と同じく川にゴミを見つけ、「なあ〜〜んだアメリカの川にもゴミはあるじゃん!!」・・・・そういう場面を想像してた・・・場所が変わり、川が変わり、日にちが過ぎ、旅も終盤に掛かった時、ゴミがあるという可能性は限りなくゼロに近いと思えた時点で、川と川の周辺にゴミが無い事が旅メンバーの話題になった。その事を自著の「山女魚風よ吹け!!」にも書いた。この事を覚えていたものだから、前回釣時に自身でもいくつか川底や周辺のゴミを拾った。川底のゴミをアメリカ人に見られるのは不味いからと地元の人にもゴミ回収をリクエストしておいたのだが・・・・・。

 Jim、よく言ってくれた。明日の仲間のパーティでもこの川の中のゴミの事は指摘して。日本人として襟を正さないといけないからね・・・・・。

 その後空気を変えるべく、今日の釣りの反省から明日の再チャレンジへ話題を変えて、解散。

 部屋に返ったT君がお茶を入れながら、断言した。

「人に釣らせるのは難しいですね。でも明日は絶対にJimに取らせますから」

「了解、明日は最初から今日の場所をやりましょう。午後から天気が崩れる感じですから、昼までに結果出しましょう」

 こうしてアメリカ人の釣り初日は終わった。残された釣りは後2日。最後の1日はかなりの雨で、実質翌日1日で結果を出さないと、日本人として立場が無い・・・・かと言って悲壮感は二人には無かった。これまで二人でこの川を釣って、釣れ無かった事は一度もないからだ。それ位二人ともこの川の釣りならば自信があった。

 「まあ、明日アメリカ人にも良いサイズを取らせましょう」

 日本のマッチ・ザ・ハッチ

 2日目 4月20日 朝9時からJimはT君のガイドで頑張った。しかし12時までJimの毛鉤を鱒が咥える事は無かった。T君は家族を迎える為、川を上がる。ガイディングを私が変わる。

 昨日、今日のJimの釣りを見ていて、鱒がJimの毛鉤に反応しない原因は、大体分析できていた。私の感想は、右手の3クウォーターのキャストを場面により、リバースキャストでやってみる事。静かに水音を立てないように、ゆっくり近づく事、2m近いJimに腰を低くしてキャストする事をJim に提案。

 毛鉤を#14番のフラブのCDCスペントを結んで、ライズを待つ事5分。Jimの射程範囲に一度良いサイズのライズ。すかさずJimに1投だけ投げさせた。

 うまく毛鉤がレーンにのった。ライズの地点にかかった・・・・・・が何も起こらなかった。毛鉤を静かに水面から抜いた。すると数秒後又同じ箇所でライズ。

 「Jim毛鉤が違う、毛鉤を変えよう」


 結んでいた毛針の浮力が強すぎるのだ。Jimのその毛鉤を私が受け取り両翼3枚ずつのCDCウィングの2枚ずつを残して、1枚だけを根本からカット。

 それをJimがリバースキャスト。

 毛鉤がレーンに乗って流れた・・・流れて・・・流れて・・・ライズの箇所でBINGO!!

 水面が爆発した。数秒暴れたが、ラインが出過ぎていて、巻き取りのトラブル!!

 数秒で鉤が外れた。残念!!  Jimと顔を見合せ苦笑い。

 その間にも別の個体のライズ。やっと魚にスウィッチが入った。「 Jimもう一度同じキャストで!!  毛鉤もそのままで良いから!!」

 Jimがキャスト。毛鉤が流れ・・・・流れて・・・・・・流れきった。その後でライズリング。先程までのライズよりも用心深い静かなライズ。先ほどまでの毛鉤を鱒が見切っていた。

 「Jim毛鉤を渡して」受け取った毛鉤の両ウイング1枚の半分だけカット。残り1枚半ずつにして水面に対する絡みを深くなるようにした。

 Jimがキャスト。毛鉤が流れて・・・流れて・・・・鱒が出た!!

 Jimが合わせたが今度は鉤掛りしなかった。Jimがもう一度投げたが毛鉤が通り過ぎた後でもう一度ライズ。Jimが再度キャストする・・・しかし鱒が毛鉤を加える事は無い・・・同じ箇所でライズは続いた。

 「Jim毛鉤を渡して」彼がが投げていた毛鉤を受け取った私は残された半分ずつの残ったウイングを根元でカット。両ウィングを1枚だけに薄くしたのだ。スペントスピナーと言うよりも、水面下のシャックの揺れを意識したフライに変化させたのだ。毛鉤の水への絡み方は気持ち深くして、水面下のウイングの揺れを強調したのだ。

 Jimがキャスト・・・・・毛鉤が狙いのレーンに乗り流れた・・・・流れ・・・・流れて・・BINGO!!  水面が爆発した!!  リールが鳴った!!「巻いて!Jim巻いて!!」・・・・Jimが巻いて・・・・巻いて・・・・水面の爆発をひき寄せた!!・・・近づいた私に・・・水面が暴れた・・・・そして・・・私がネットを差し込んだ・・・BINGO!!



 バンブーロッド " デザイナー "  という幸せ 

  鱒は50cm丁度の雌のレインボーだった。

   Jimの巨大な手と、グチャグチャの笑顔はこの旅のクライマックスになった。

  アメリカの大きな川で大きな鱒を釣るのと、この小さな川で、同じサイズの大きな鱒を釣るのは、全然違う釣りでした。その事は使うバンブーロッドが違う事もハッキリ理解しました。この小さな川でHenry's Forkの50cmオーバー鱒を釣る時に使う、8'0" #4 のロッドは、長過ぎるですね。もっと短い7'6" や 7'0"  のバンブーロッドをAkiが製作している意味がよく分かります。 

 Akiが工房で話してくれた通り、Akiの HEXA バンブーロッドは間違いない本物の道具ですね。でもアートの作品のように細部まで美しい。Akiはバンブーロッドビルダーと言われてますが、Akiがやって来た仕事はビルディング=組み上げるというよりも、ゼロからバンブーという素材を使って、新しい道具 HEXAバンブーロッドを創造したのですから、バンブーロッド"デザイナー"という言葉が Aki には相応しいですね。

 今日やっと1匹取れた。でも今日の魚は僕の魚では無い。Akiの魚😎・・・明日は自分で取りたいですね・・・・・・とJimが言った。

 残念ながら翌日、最終日は雨で釣りが出来ないまま、Jimの日本釣り旅が終了した。

 出発待ちの新幹線駅でJimが面白い事を聞いてきた。彼の質問の真意までは理解できなかったのだが・・・。

 Akiは幸せですか?バンブーロッドの仕事をやって来て幸せですか?

 「・・・うん、幸せだね。楽しい釣りを自分の好きな時に出来て、自分の好きな物作りを仕事に出来て、子供2人を東京の大学までいかせられて、家族皆が幸せな生活が出来てるのはバンブーロッドと鱒のおかげだからね。これ以上の幸せは僕には考えられないね」


 Jimは知る人ぞ知るi-Phone のデバイス、 iCloud を開発したその人。私の手仕事の対極にある時代の先端のコンピューター世界のど真ん中で生きている人。資産家の彼をして、お金ではどうしても買えない手仕事の世界に生きる男の人生観を聞いたのだろう。

 今回 2日間しかJim にHEXAを使わせる事が出来なかった。彼の日常にあるマジソン川。この名流は荒瀬のフリーストーンの大鱒川。マジソンで私が使うとしたら 8'0" #5  2pcのHEXA Number-5 だ。大男Jim Dawson ならばこのTROUT HEXAを楽に使いこなせるだろう。彼の日常で、彼のパーソナルロッドとしてHEXA を使えば、iCloud 世界の男の素直なバンブーロッド感が聞けるだろう。今度は私がJimの世界をリポートしよう。


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2024年4月25日木曜日

初めての日本のFly Fishing

 Jim Dawsonの日本のFly Fishing

 モンタナの友人 Jim Dawson が日本まで釣りに来た。アメリカの超名門FFクラブ、サンフランシスコ・ゴールデンゲート・キャスティングクラブの主要メンバーでもあるJim。アイダホ のイベントで仲良くなった友人で、HEXA で日本の大鱒を釣って見たいとのJimのリクエスト。勿論、大歓迎。

 Fly Fishing の本場・モンタナからわざわざHEXAで釣って見たいと日本までやってくるという釣り人としての、飽くなき欲望?!それは私が数十年日本からHenry's Forkに通っている事とイクオール。Jimの釣りの度合いが分かるが故に、大歓迎である。

 4月18日、昼前に博多に入り、アキマル工房とHEXAの製作風景を取材し、昼は博多名物の豚骨ラーメン、夜は福岡の新鮮な鮨を楽しんだ。

 鮨を摘みながら、工房で観察したHEXAロッドに関するJimの感想は・・・・・

 ソリッドロッドだけだった時代から、想像出来なかった軽快なキャスティング・アクションで、尚且つ粘りがありますね。グラファイトロッドと比べても遜色無いシャープなアクションを持っていて、尚且つ道具としてのフィッシング・バンブーロッドだと思えた。もう一つ凄いと思ったのは、美しいスピゴットスタイルのHEXAジョイントは正に未来のバンブーロッドですね。明日からの釣りが非常に楽しみです・・・・・・・。

 Jimの言う通り、昔のテクノロジーでは作ることの出来なかったHEXA バンブーロッド。

 その背景には、時代とともに進化し続けている接着剤こそが現代の、そして未来のバンブーロッドを可能にしている。

 現代バンブーロッドに不可欠な要素それは、ホロー構造の薄いブランクの壁=接着面積が小さくても剥離しない接着剤、尚且つ接着力の強さに、プラス柔軟性を備えた、使いやすい現代の接着剤、この接着剤の進化こそが現代のバンブーロッドの性能を飛躍的に向上させたと言っても過言ではない。

 エンドレステーマ  HEXA

 その一つの例が、バンブーロッドのレジェンドHoagy B.Carmichael をして、バンブーロッドの未来を予感させると言わしめたアキマル のメインロッド、オリジナルデザインのHEXAバンブーロッドだと自負している。
 セミホロー構造から生まれるブランク本体の六角穴、それをメス穴として形作られるHEXAジョイント。HEXAジョイント及び HEXAバンブーロッドは接着剤の高性能こそが、もたらしてくれた21世紀の進化型バンブーロッドである。

 10数年のフィールドテストと実験改良が間違いなくHEXAを進化させている。

 バンブーロッドにおける永遠のベストパーツ=メタルパイプフェルール、このパーツの作り出す素晴らしいロッドアクション。
 唯一気になるところを敢えて、言葉にするとロッドが曲がった時に、ロッドブランクは靱り、曲がっているのにメタルパイプフェルールの数cmが、物理的に直線のまま。
 直線であり続ける事こそが竹と金属という異種素材接着で構成されたジョイントの宿命と理解しながら、敢えてその事が改良出来ないかと挑戦するのもバンブーロッドビルダーの性?

 このジョイント部位の直線部位がもっと短くなってくれたら、もしくはジョイント部位が靱ってくれたら、ロッドアクションはもっと良くなる筈。10数年前アキマルはそう思ってしまったのだ。実験が始まった。
 10数年実験を重ね、出て来た答えは・・・HEXAの第9世代。
 現段階の最新型HEXA第9世代、正六角形のカーボンPINをバンブーブランクで覆ったオスと、正六角の長さ10mm~12mmの金属チェックと、全く伸び縮みしないメタル製ラインのクロス巻きのメスのジョイントHEXA構造である。

 ジョイント金具部位を先記メタルのショートフェルール の長さより約1/4~1/3 短く出来た。その結果 2pcロッド全体のベンドはより美しいカーブを描き、ロッドアクションは間違いなく良くなった。

写真は第9世代のHEXAのメスの部分。六角の金属チェックとメタルラインのクロス巻き。その上をシルク糸で巻き、コーティング

 第9世代HEXAのアクションは、軽快な中にシャープでなおかつ粘り、大鱒釣りの耐久精度も申し分ない。ブランクが描くベンドカーブも美しい。

 しかしHEXAは今後も『 完全 』を目指し、HEXA 進化へのアキマルの想いは続く。しかしおそらく『完全』の答えに終わりは無いのだ。


 今日も新しく届いたラタン素材を使って、新アイデアを既に実験し始めている。皆様にもお披露目したくてウズウズしている。しかしフィールドテストを合格させてからしか、話せない。片方では、今後、もし改良点が出て来ても、その要素はほんの微々たる物だろう事も想像出来る。その僅かを見つけ出せればとアキマルは最後まで『完全HEXA』を思い続けるのだろう。

 Jimが言った。

 HEXA は答えを永遠に探し続ければ行けないものですね・・・・・・・・お鮨ゴチソ様でした。本当に美味しかった。アリガトございます。では明日から釣り宜しくお願いします。

 Jimの怪しい日本語でホテル前で別れた。翌日4月19日7時15分発・新幹線中央口がJimの日本釣りの入り口だった。 

 Jimの日本釣り模様は次回  10DAYS で😎


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