2012年2月22日水曜日

no.19 A君、一緒に世界を極めよう。


2012年正月元旦、玄関に掲げた国旗を見ながら、又自分を考えた。


大震災後、日本人としての役割だ。しかし『私にも何か出来るのだろう』と、『ナンも出来ん』の堂々巡り。唯一に行き着くところはやはり竹竿作りだけだった。


私は約10年前から、『竹竿塾』という私塾を開設、プロになる為の竹竿製作指導を仕事として若い人達に伝えている。
先日も入塾希望のN君が東京から面接にやって来た。
見るからに生真面目なA君、41歳の消防士さん。好青年(41歳でも)だった。

朝10時、来てすぐの緊張した様子が、夕方帰る頃には
「今居る世界とは全然違う、想像すら出来なかった新しい世界が、竹竿を作る事から展望出来るようで、益々やりたいです。是非教えて下さい」
と興奮した面持ちで、頭を下げた。



入門を希望したのはまず私のホームページを見て、そこに有る世界観に引かれ、電話したというのだ。
ホームページは私の娘のデザイン。
去年「お父さんの感覚はもう古い、もっとブランディング力を上げないと駄目よ」と娘に言われた時に、納得する自分がいた。親としてうれしくもあり、クリエーターとしては悲しくも有り。世代交代とはまだまだ認めたくないが、うちにも新しい世代が出てきたのだ。以来宣伝販促部分のデザインには一切口を挟まない。東京芸大出の娘に完全に任せている。

A君の反応は、その私の大人の判断が好を奏した一例だと思う。エヘン!!違うか?


私の思うのはどんな世界にも上手い世代交代。何時までも年寄りがデカイ面している世界は絶対に良くない。若い世代に先立が上手く指導育成しながら交代をして行く事の大事さを痛感する。これが上手く行かないとまず其の世界の存続が難しくなる。
私の竹竿世界で一番大切な竹材供給部分、この良竹材を作る竹職人さんが其の需要の無さからほとんどいなくなっている。其の得意な技術を継ぐ若手が現れないのだ。いや意思があっても経済的理由からやれないのだ。そこには其の技術や出来上がる竹製品のよさを理解、購入、使う社会の必要が有るのだ。私の竹竿世界も同じ、今私にやれるのは竹竿の市場を作る事と平行して若手に技術を伝える事と認識している。



数えるに私が竹竿塾で指導した生徒は今まで16名。既に実際にプロとして活躍している子もいれば、まだ別の仕事を主業にし竹竿屋としての独立を狙っている子など、色々である。2年前から教え子の中に私も認める良いロッドが作れる者がやっと出て来た。寒気を覚えるほどの本物の完成度、物の存在感までは無いにしても、仕上げなどは仔細に見たいレベルまで完成度を上げている。努力と精進がロッドに確実に見えるのだ。教えた甲斐があったというもの。竹竿でもいよいよ私の息の掛かった新世代が生まれて来る予感がする。うれしい、その本物の出現を現実にして欲しい。



しかし職人個人としてはまだまだ負けられない、まだまだ俺は先を行くモンネ。これも
職人として、人間としても本音。微妙な所をご理解を!


竹竿は作り手が直接モノに現れるから怖い。竹竿は芸術ではない。道具である。理屈はいらない。本物の竿は感動を呼び、釣に行きたくなる。それ以外の竿は偽物である。これが私のバンブーロッド論。

自分がどうありたいか常に考え、それを実現する為のベストを尽くせ。総て実践行動有るのみ。ただしプロは結果である。そこに尽きる。この事をすっぱくなるほど伝えて来た。10年経って、やっとオリジナル色を持った本物の新しい世代が出てくる。楽しみだ。

A君一緒にやろう。是非世界に通用するTopバンブーロッドビルダーになってください。