2023年7月18日火曜日

2023年Henry's Fork旅    その3

  何時もの?! ウッドロード16

 話は 6月20日の午後。イヴェント仲間に別れを告げ、一旦宿泊先ロッジRisingSun Ranchに仲間を迎えに。その足で待望のパインヘイブン釣りへ。

 既に1台先発隊は出発しており、Chrisのスバルと私の箱バン車で20号線をすっ飛ばした。10分ほどでオズボーンブリッジ手前を大きく左折、ウッドロード16の入り口を目指す。

 そこからは箱バンレンタカーでは決して許されないドライブ。ごめんねBudget さん。

 メサフォールへ続く舗装道からウッドロード16に右折、そこから始まる悪路は毎度のことなのだが、過去30数年、通常のセダン初め、箱バンでも大騒ぎしながらでもまだ余裕はあった。

 所がコロナの悪影響がここにもあった。物事全てコロナが世界状況を悪くしたのだ。今回のウッドロードの壊れ方はインディージョーンズ級の悪路だった。始まって、わずか3分も行っただろうか?目の前に広がる道路の窪み、水溜りの陰が異常に黒く、広く、段差がひどいのだ。 それでも先行するスバルの後を追随する。スバルは行けたが箱バンは2mでストップ。後部座席の永田さんと最所君が車から降り、水溜りの深さを棒切れで図る。スバルも戻ってくる。Chrisが窓から腕を上げ、箱バンの進路を慎重に指示する。永田さん最所君は重量を減らす為に、その場所通過まで下車、歩く。車体の底がガズガズと悲鳴を上げる。車体が大きく傾く、思わず右にハンドル、そして又左、直線で1m、左に1m、さらに逆ハンドルで1m!!なんとかその場をやり抜けた。2人が乗車。揺れて、跳ねて、しがみついて又スローダウン、道路の水溜りとChrisの指示を見ながら、手にびっしょりの汗。この地獄の悪路が30分。ギリギリのエンスト覚悟、スタッグ必死の最悪悪路。

 この場所を最後まで釣ると、真っ暗の帰路ドライブは絶対に無理。それでもなんとか、ギリギリ、視野に雄大なパインヘイブンの流れの景色が見えた時、ほんのちょっぴり安堵。全員下車してお約束の写真撮影。後いつもの好ポインントまで残り5分。最後の難所を目の前に運転には本当に腰が引けた。

 「Chris此処に駐車しよう!!」

 所が「なんで?後5分じゃん。いつもの駐車してる所まで行こうよ」

 「お前さんは良いよ四駆のスバルだから、俺の車見てみろよ!!」

 我が箱バンの車体側面下側は擦り傷に凹みさえ見えた。しかしChrisは動じない。

 「OKわかったよ。その代わりしっかり道筋を支持しろよ!!」

 もうやけくそだ!!その先500m、2m幅のトレイルの泥道、乾いてはいるがトレイル両サイドは幅60cm、深さ30cmで抉れている。中央に幅わずか10~20cmの盛り上がりの草叢の筋道。この中央盛り上がりに肩輪、トレイルのセージの茂みに肩輪を乗せてスバルの後を進む。右草の茂みに20cm台の岩がゴロリ。左サイドにもセージの潅木の中に大岩。もうやけくそだった。

 ガズガズ、ゴトゴト、ガタガタ、ガン、ドン、グシャ、バリバリ!!

 どうやってやり過ごしたか一切覚えてない。喉はカラカラ状態で、5分後、目的のゲート前広場に仲間の先行車があった。

 CHrisが言った『Nice Job😎』

 私は中指を立てて彼を呪った。

          
 (この際ついでに報告してしまう。帰路、同じコースを辿る訳だが、状況がわかってしまっているだけに、夕暮れの迫る、帰路のドライブは更に慎重なドライブを強いられた。この悪路を抜けた時、今旅のパインヘイブン行きに関しては全員が口を閉ざした。当たり前だよね)

 Dry Fly Match the Hatch 

 この命からがらのドライブで、何とか辿り着いたパインヘイブン。先行隊は既に入川していた。着替えを急ぐ。20分後、上下2組に分かれ釣りを開始。

 「いくぜ谷ヤン!!」私は谷澤君を先導、ガイドの為に下流に歩き始める。4年ぶりのパインヘイブン。水草の量が増えている。良い傾向だ。しかし虫の流下は・・・・・・・・無い。矢張り情報通り、まだ釣りはスローの様だ。下流50m辺りのいつもの好ポイントに視点を絞る・・・・・黒い盛り上がりは・・・・・・無い。視界の一番先に黒い点で釣り人が見える。その釣り人の後側に30m級の切り立った崖、通称クリフ。この崖下が絶好のポイント。気持ちが流行る。先を急ぐ。

 世間でHenry's Forkの釣りと言われているのは此処から車で30分上流のラストチャンス・エリアからこのパインヘイブン下流まで。この区間で虫の食い分けをしている叡智の大鱒を釣る、マッチ・ザ・ハッチの釣りがHFの釣り。本物の釣り人はこのマッチ・ザ・ハッチの釣りでライズの謎を読み解き、自分で選んだ毛針を、ドラグフリーで大鱒に咥えさせ、フッキングして、強烈なファイトを自分でロッドで捌き、一人でランディングして、スムースなリリース、それで完結。その釣りを成功させる為の必要要素はまだいくつもあるのだが、これも同じく経験と最大の細かな気配りのテクニックを必要とするのだ。

 ライズを探し、足元に見える踏み跡を目印にセージの丘を上り、高台から魚を探す。対岸の別荘群は相変わらず健在なようだ、少しイラつく。コロナでも悪影響を受けない連中なのだろう。マアそんな事はどうでも良いや。釣りを続けよう。

 私が推奨するHFの釣りは Dry Flyのマッチ・ザ・ハッチ。その為には先ずライズを見つけられるかどうか。見つけるまでロッドを振る事は無い。ロッドを振っている時間より、魚のライズを探している時間の方が圧倒的に長いのがHenry's Forkの釣り。

 更に、目当てのクリフ(崖)下を目指す。途中の好ポイントには矢張り黒い盛り上がりは見えない。クリフ下、沖目に釣り人が一人。どうも仲間の奥ヒサオさんのようだ。声を掛けるが遠すぎて聞こえてない。彼が下流の方へ流れを歩いていくのが見えた。視線を目的の崖下のベタのプールに戻す。しかし水面は滑らかに白く反射して、静かに流れるだけだった。そのプールの流れ出し、と言っても川幅100m以上ある流れの端の緩やかなポイントなのだが・・・。

 その流れ出しの岸辺。30mほどの直角の崖が崩れ、大岩が重なった岸辺。その岸辺ギリギリに梅花藻の茂みが幅10〜20cm 長さ2mで、お約束のように今年もへばり付いている。その藻の下、その岩の付近で必ず良いサイズの鱒が現れるのだ。毎年だ。もう30年以上通っているHFで、このポイントは30年前から、いや恐らくもっと以前から同じ状態でその場所にある。其処で、いつもライズがある。

 そのライズフォームは、藻の前のスペースに鱒が出ている時は水面を盛り上げるようにして、頭から背鰭を出す悠然とした食い方。しかし一旦その場の不自然さを感じた時には必ず岩下か、藻の下に隠れ込んでしまう。そうなるとなかなか出てこない。しかし虫の流下が止まない時には我慢しれれないのだろう、数分後には又採餌を始める。しかしそのライズフォームはそれまでの、おおらかな食い方とは全く違う。藻の際1cmの処で食い始める。この状態になってしまうと釣りの難易度が100倍難しくなる。これこそがが究極のマッチ・ザ・ハッチ。この究極のライズの大鱒は毎回53cmを下回った事はない。

 藻の際1cmの処で僅かに水がピッ!と弾ける。1cm台の水玉が弾ける様子を想像あれ。目を凝らし、しっかり観察してないと、ほとんど魚のライズには見えない、ゴミの水泡が弾けるのと同じ状態なのだ。しかしそれがこのポイントの大鱒ライズなのだ。このポイントで味をしめた事のある釣り人にしか見えないライズかも知れない。この最高難易度の叡智の大鱒を取ってこそのHF釣りである。私のFly Fishing の合格点はこの究極鱒を取れるか、どうか?!それ以下でもそれ以上でも無い。谷澤君にその釣りをさせたいと思い連れて来た。

 先ず、上流から下流に向かい、流れに乗る状態で、音を立てずに、波を立てずに近づく、その歩き方を教えながらポイントを目指す。3分ほど静かに波に乗り、遠目沖目からライズを待った。

 頬を撫でる風、音は微かな風の音と小鳥のさえずり。波がウェーダーに巻きつきながらピロピロと静かに消えていく。

 崖前のスペースには何も起こらない。その位置からだといつもの藻の帯は見える。しかし際の状態までは全く見えない。音を立てないように、波を立てないように更に近づく。5分後、岸から15m、流れの筋をいくつか私達と藻の間に置き、気取られないように観察。藻の1本、葉の揺れまで見える、しかし水面の動きは無い。風が抜けていくだけ。10分待ち、20分待ったが何も起こらなかった。無理もない虫の流下は・・・・・・・・ほとんど無いのだから。30分が過ぎた・・・おそらく先行した我がメンバーがこの場所をやった気配?・・・・・・時間がもったいない。一旦上がり、別の魚を探す事にした。

 トレイルを逆に、上流目指し、魚を探した。

 入川地点水中でChrisが毛針を結んでいた。私たちに気づき、指で流れを指差す。そこに多分良いサイズがいるのだろう。手をあげて答えながら、微かな焦り。この先上流にはメンバーが4人も先行しているのだから・・・。

      
厳しい条件下、HFのベテラン東北の名手安斎さんは結果を出した。流石。料理もプロ級の腕前で永田さんと2人シェフで、旅間の食事は家の夕食よりもすごかった。感謝!!

 やっと見つけたライズ1匹 

 15分ほどバンク側と岸辺から5~10m沖目の辺りを中心に視線を動かし、過去の好ポイントは注視しながらゆっくりとトレイルを歩く。上流にメンバーの庄司君が立ち込んでいるのが見える。永田さんが崖の上に立っているのも遠目に見える。あと2人は何処だ?探すが見えない。視線を足元に戻しかけた時 「魚!!」谷ヤンが叫んだ。 「何処?」  谷ヤンが指差す方向を凝視すると10秒後、20m上流、右手岸辺から5mの緩い瀬の中から黒い頭が盛り上がるのが見えた。

 「ヨシ!!取るぞ!!谷ヤン!!」やっと見つけた最初の1匹、どうしても取りたかった。

 「何処からやりたい?!」「得意のポジションが良いぞ!?」「アップクロスが良いですね!!」「OK。じゃね、先ず流れまで降りて、音を立てずに先ず流れの中から魚の位置を確認して」

 「その上で、その位置を見失わないよう岸辺の岩や景色と魚の位置を頭に叩き込んで。魚が動く魚だからね。それから、水中を直角に沖目に30mほど、水音を立てないように、魚の位置を見つめながらね。ゆっくり、本当にゆっくりで良いから歩いて行って。その地点でもう一度魚のライズを確認」

 「確認できたら、流れの筋を上流に向かって上がって。上がるこの時こそ流れを逆流するから音がデカくなるからゆっくり、静かにね」そういう間にも谷ヤンは身を低くしながらバンクの草むらを流れに向かいゆっくりと降りて行った。

 流れに立った。魚の位置を確認。黒い影は同じ場所でもう一度現れた。

 「OK、音を立てるなよ。魚の位置を目印で覚えて」

 谷ヤンが魚の位置を確認しながら、ラインを引き出した。

 「フラブのスペント!!」私の声にOKサイン。

 「良いぞ!!ゆっくりね・・・・・」   私の最後の合図で谷ヤンが動き始めようとした、その時・・・・・・

 ライズの上流12~13m、死角になっていた岩壁の向こうから釣り人が流れをザバザバと進み出て来た・・アッ!!待って!!」谷ヤンと私が同時に叫んだが間に合わ無かった。

 魚は一発で沈んだ・・・・・・・・・。

 ライズを見つけるのも大事。毛鉤の選別も大事。ドラグフリーで流すのも重要。しかしHenry's Forkの釣りで先ず何が大切か?それは魚に対しての近づき方=アプローチなのだ。どんなに楽なライズでも近づき方が不味いと魚は沈んでしまう。

 先ずは釣り人は自分の得意の釣り方を認識する事。アップのストレート。アップのクロス。直角のクロス。ダウンクロス。ストレートのダウン。その上での自分の得意の射程距離。得意の位置まで、どうやって魚に気取られないで近づけるか。渡渉の音と、波音を立てない。波の波紋を魚に届かせない。影を写し込まない。とにかくゆっくりしか近づかない。この得意位置に、魚に気づかれないで立てた上でしかキャストも釣りも始まらないのがHenry's Fork。この日のようにライズの数が少ない日の大鱒の黒い影・・・・・良いサイズだったが・・・・・。

 帰りの悪路を思うと、今年のパインヘイブンはこれで終わり。もっと釣りをやりたげだったChrisを説得。電話でその日のテーブルをトラウトハンターで、ギリギリ予約。PM7時45分明るいパインヘイブンを後にした。

 釣りはあと残り2日・・・・・・・・・・旅は続く



一番上がアシュトンの前田さん。中央が、中華を皆にご馳走してくれた庄司さんの怪しい20"😎 下は念願のラストチャンスで初めて取った永田さんの正確な20" レインボー。渋い状況の中我がSlow Weding Social Clubのメンバーはしっかり成績を上げていた。皆さんが使用したAKIMARU BAMBOO ROD に乾杯!!