やはりHenry's Fork
4年ぶりのHenry's Forkは矢張りFly Fishing の聖地だった。
このコロナの4年間、国内の鱒釣りでもそこそこ良い釣りを楽しめていた。ショートロッド 3pc ROXの開発や、バンブーロッドの大鱒ランディング性能についてのリポートも精度の高い情報が集められた。その意味では意義ある4年ではあった。しかし日本の釣り場通いが続くと、見えなくて良い日本釣り世界の雑多な場面にも出会って、ちょっぴりストレス。そんな雑多な事を一切感じさせない、釣りだけを本心楽しめる世界がHenry's Fork、ご紹介して来た通り、釣り空間が物理的に雄大なのだ。完璧な非日常がそこに広がっている。
釣り場空間の雄大なサイズ = ノンストレス+釣りの面白さ。それは魚の賢さ、サイズ、パワーとイクオールでもある。その事を改めて4年ぶりに再確認出来た。使用するバンブーロッドもしかり。日本の狭い空間ではショートロッド の効用を感じる。しかしHFの広い空間、風が常時ふく釣り場、サイズの大きな、強い叡智の大鱒には最低でも腰の強い4番の7'6"、いや 7'9" #4 の強い鱒用バンブーロッド、8’0”#4のPin Point アキュラシイ精度を持ち、高いランディングスキルを持ったトラウト ロッドが必要。
今回のThe Bamboo Rod Days 2023 の会場でのAKIMARU BAMBOO RODS の評判は、4年のブランクの所為もあったのか、来客者が多すぎて、私が各顧客対応を諦める位の大好評だった。
中でも804-2 HEXA, 794-3 HEXA はとりわけ凄い評判だった。プラス764-2 HEXA 2種、 これら4機種は朝の9時から夕方5時まで、常に誰かや、どこかの塊グループがキャストしていて、探すのに苦労する位だった。
会場は一番混み合った初日の午後には100名以上の来客があり、70m x 200m以上あるだろう草の広場にキャスティングスペースを見つけるのが大変な程の混み様だった。中でも私が特に惹かれたキャスターが2人。我が相棒Chris Moore ともう一人。
Chrisは身長は私と同じ175cm 強位なのだが、体重は100kgを超える巨漢、彼は文字通りのパワーキャスターであり、同時に細かい技のテクニシャン。彼の為に作った7’9” 3pc HEXAで4番ラインをフルキャストしていたかと思うと15~17m距離のカーブやスラックキャストも次々に投げていく。教えて貰ってもその場では表現出来ない距離。改めてアメリカのFly Fishing の底の深さに魅せられた。
Kyle の事
もう一人凄いのがいた。相棒 Chris の向こうで同じレベルの美しいループを作り出していたのが私よりも小柄な日系4世のKyle。
向かい風にも関わらず、スロースピードのラインで、常に平行幅で、ループが伸びていく。ゆっくりだが力の乗ったラインは落ちない。丘の上にあるこのキャスティング広場に吹く風は常時、結構な強風。それを問題せずにラインが伸びていき、ティペット先端部位がふわりと落ちるのだ。そのキャストは間違いなく実践釣りのキャスト。その向こうに凄腕の釣り人の像が明確に見えた。バンブーロッドビルダー、アキマルの一番希望する相手である。
Kyleは名手John Juracek事、J Jのキャスティングの弟子で、あのPatagoniaのFly Fishing 部署のアメリカ、カナダエリアの担当者。上手いはずだ。
彼はJohn が 804-2 HEXA 2pcを使っている事から、今回 AKIMARU BAMBOO RODの数本を実際にキャストして、その上で1本オーダーしたいとやって来たのだ。中でも彼が気に入ってキャストしていたのがJ Jの使っている8’0” #4 2pc 他3本。
804-2 HEXA John Juracek Spcial 事 J J Special バットアクション。
そして新作 7'9" #4 3pc HEXA Henry's Fork Special プログレッシブ・ティップアクション。
旧メタルフェルールの7'9" #4 2pc Henry's Fork Special 強いティップアクション。
最後がHoagy Carmicheal からリクエストで製作した 7’6” #4/#5 764/5-2 HEXA 2pc。
とりわけ 804-2 HEXA JJSpecial が気に入ったようだが、この会場では結局決めきれず、数日後にJohnと釣りを一緒にして、現場で804-2 HEXAを実際に水に絡めて投げて見てオーダーロッドの内容を決めるという事になって、その日は終わった。
帰国後、メールで打ち合わせ。此の数回の要所を抑えた簡単メールで、HFマッチ・ザ・ハッチ釣りとバンブーロッド好きの釣り人の意思の疎通はスムーズに行った。8月7日の朝の時点でKyleの希望ロッドの仕様がほぼ決まった。矢張りKyle は自分のスタイルはしっかり持っていた。
彼の希望内容は804-2 HEXA JJ Special WATAKE のセミホロー仕様、バットアクションを基本に、風の強い日の使用と対大鱒パワーの要素を少し JJ Specialに加味した強さ、尚且つロッド全体を使って大鱒を暴れさせずに取るパラボリック寄りのアクション。Henry's Fork マッチ・ザ・ハッチの必須要素、6x 5x のティペットが使えるしなやかさと粘りは勿論想定している。
そしてKyle が最後まで、どうしても拘ったのがスピゴットフェルール=バンブーフェルールの滑らかなHEXAアクション。HEXAのスピゴットフェルールにしか出せないアクションの滑らかさをKyle が分かっているのだ。
矢張りKyleは見立ての通りSerious Angler だった。JJのゆったりした釣りの向こうに804-2 HEXA JJ Specialの早めにバットが動き出すバットアクション。そして強風の中でもPin Pointで毛鉤を打ち込め、尚且つ大鱒を取り込めるパワーを持ち、6xのティペットにも順応出来るしなやかさとバネと粘りを持った、ロッド全体を使う強めのセミ・パラボリックアクション、804-2 HEXA フルウェルズ・グリップ+アップロックシートの大鱒仕様。私も彼のこの希望案に納得。
このKyle Special のアクションに込める、強さの中にある粘りこそが本物の大鱒釣りの為に数十年練り込んで完成したAKIMARU のHenry's Fork Special アクションなのだ。
矢張りKyleに感じた私の釣り人としての勘は間違いなかった。
Kyle Tatsuno Toyama 日系4世 35才。 現役バリバリのHenry's Fork Fly Fisher。来年6月の彼との釣りが楽しみだ。
私自身も楽しませて頂いた2023 Henry's Fork 旅の執筆も今日が最終回。やはり旅は物語である。旅はやはり非日常。新鮮で心踊る体験、加えて旅でしか味わえない友との交流、其処には必ず人生に大切な物を発見する。次回2024年HF旅までの10ヶ月半、心は既にHenry's Fork中心で回り始めている。
今回旅は、贅沢だが、イベントが多すぎた。肝心の夕方の釣りがそのイベントがらみもあり、全く出来なかった。特に私は夕方も日中も、プライベート釣りそのものが一回も出来なかった。狙いの大物ライズがイマイチだった事から、ガイディングに時間を取られすぎた。仲間達に釣らせる前に私が釣るわけにはいかなかった。加えてHunter や Frank の悲しい出来事も重なった。もう個人の釣りをやるエネルギーは残っていなかった。HF旅初参加の奥ヒサオさんには約束していた大鱒とガイディングが出来なくて申し訳なかった。
しかし、HFまで行って釣りをしなかった。それも私の意志。
しかしそれをして尚 Henry's Forkは凄かった。
既に来年のHF旅はの出発日を6月13日と決めた。来年こそはKyle、Chris、Rouel 、John、Rene、Urs 、Andrew 等など、アメリカ人友人達とも釣りをやる。
次回 10DAYS から9月末に迫ったアキマル恒例イベント鱒談会2023のご案内と9月のCatskill旅の物語を予定しています。乞うご期待です😎